オピオイド依存克服の特効薬になるか? ハーブサプリメント「クラトム」の中身

これに対し、アメリカ・クラトム協会はFDAに書簡を送り、FDAが都合良くデータを解釈し、クラトムを危険薬物に仕立て上げていると強い言葉で非難した。さらに、クラトムが原因とされる死亡事例の大半は、検体にクラトムが誤って混入したか、他のドラッグが原因の可能性もあると主張した。「FDAはこれまでも、消費による天然植物由来のクラトムの入手をひそかに阻止するべく、情報操作や隠ぺい、無視といった手段に訴えてきました。これは明らかにプロらしからぬ検証結果です」

多くの薬物調査の場合がそうであるように、クラトムと過剰摂取の死亡事例との関連性を見た時に、果たして本当に死因はクラトムだったのか、それとも死亡時に検出された他の薬物なのか、真相を解明するのは困難だ。CDCもレポートの中でこの点を明確にしている。過剰摂取による死亡事例152件でクラトムの陽性反応が出たものの(調査対象全体でみれば微々たる数である点は重要)、死亡時に他の薬物が体内に残留していたかどうかは定かではない。たしかに、クラトムが関連した事例の80パーセントを見てみると、死亡者はヘロインやフェンタニールを中心に薬物依存を抱えていた。また「ほとんど全ての事例で、死後の薬物検査から複数の薬物が検出された」。すなわち、必ずしもクラトムだけが原因だとは限らない。死後の薬物検査で検出されたのがクラトムだけだったケースはたったの7件。CDCも、必ずしも「他の薬物が関与していた可能性が排除される」わけではないとしている。

だからといって、クラトムが100パーセント安全だというわけではないし、r/kratomというサブレディット( Redditユーザーによってテーマごとに作成・管理されているコミュニティ。日本の電子掲示板の「板」にあたる)などで多くの賛成派が主張しているように、オピオイド中毒治療の特効薬というわけでもない。しかしながら、クラトムやその利用状況に関して、さらなる調査をおこなう必要があるだろう。そうすれば、最善の対策も講じることができる。リヒター博士曰く、何はなくとも今回の調査によってはっきりしたことは、標準的な薬物検査プロセスにクラトムを加えるべきであり、人々が安全かつ効果的に利用できるよう、クラトムの製造販売を規制するべきだということだ。

Translated by Akiko Kato

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