音楽業界の財源となったストリーミングサービス、利益分配に関する新事実

この変化をもたらした主な要因のひとつは、2017年の前半にSpotifyが各メジャーおよびインディーレーベルと交わした契約だ。その内容は各レーベルがSpotifyから受け取る利益を、全体の約55パーセントから52パーセントに下げるというものだった。Spotifyが経済的により安定した企業へと成長するためにより多くのマージンを得ることを、レーベル各社が同意した形だ(この点が重要なポイントとなるので覚えておいてほしい)。

ストリーミングサービスはどの程度の額を受け取っているのか? イギリスに拠点を置くBPIが発表した内容と、Entertainment Retailers Association(ERA)が公開している売り上げに関するデータを照らし合わせると、ダウンロード販売およびレコードやCDのセールスを切り離し、Spotifyをはじめとするストリーミングサービスが手にする収益が見えてくる。

以下の表を見ればわかるように、ERAの発表によると、各ストリーミングサービスのイギリス国内における2018年の総売上は8億2910万ポンドにのぼる。一方BPIは、同年における各ストリーミング企業(ここでもアーティスト/レーベルへの分配率を公開している)の卸売総額を4億6760万ポンドとしている。



これらの数字は、イギリス国内におけるサブスクリプション型ストリーミングサービス各社が、総売上の56.4パーセントをレーベルとアーティストに支払っていることを示している。その数字は前年の57.6パーセントからやや下落しており、2016年の58.9パーセントからは2.5パーセント下がっている。この変化には、Spotifyが各レーベルと交わした先述の契約が大きく影響している。

業界標準とされているIFPIの年間レポートによると、昨年2018年にイギリスの音楽産業の市場規模は、アメリカと日本に次いで世界第3位となっている。イギリスが欧米の音楽産業の中心地のひとつであるという事実を前提に、同国における各収入源のトレンド傾向を前年のアメリカ市場に適用してみることにする。RIAAの発表によると、アメリカ国内における2018年度のストリーミングの「小売」収入は54億ドルであり、その他のフォーマットを含めた総収益の半分以上となっている。54億ドルの2.5パーセントは1億3500万ドルだ。

この変化は決して小さくない。言うまでもないが、アメリカはあくまで市場のひとつに過ぎない。レコード会社の同意を得てSpotify(およびその他の企業)が2017年に受け取ったマージンが、9桁におよぶ昨年のストリーミングサービスの総収益に反映されることは間違いない。

Translated by Masaaki Yoshida

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