渡辺志保×DJ YANATAKE「2019年最注目のラッパー、ブルーフェイスの魅力」

ブルーフェイス(Photo by Stephen Maturen/Getty Images for Spotify)



Y:KOHHのアルバムの後、KANDYTOWNや、そのメンバーであるKEIJUからもサプライズ・リリースが続いたのも印象的だったな。一時期のUSのリリース状態を見ているような感じがした。

S:ドレイクとかジェイ・Zとか、一時期、みんなそういった形でリリースをしてましたもんね。ただ、今の日本のシーンを見ていると、サプライズ・リリースは一長一短というか、必ずしもいい結果を残しているわけではないなと感じますね。やっぱり埋もれてしまう作品も多いと思うし、リスナーもサプライズに慣れてしまって、「ああ、またか」と思われることも増えてきそう。そうなってしまうのであれば、正攻法で告知をするほうが結局いい結果に繋がるのではとも思ってしまいます。

Y:日本ではまだ目新しいリリース手法に見えるのかもしれないけどね。KOHHのアルバムは、いわゆるCD売上のチャートのほうではあまり振るわなかったという結果が出ているみたいだけど、日本コロムビアのサイトではすごく売れたみたい。だから、レーベル側がオリコンのチャートとかそういうところも無視して仕掛けてるんだったら、それはそれで画期的だし、かっこいいよね。それって、<オリコンの呪縛>みたいなものから解き放たれているのかな、と。

Y:日本でも、ストリーミングがダウンロードの売り上げを抜いたと言われているけど、思いのほか、速かったなと感じますね。今や、ダウンロードしてデータを持っていないといけないのは、DJくらいじゃない? むしろダウンロードするのがダサい、みたいな風潮にすらなっていると思うけど。

S:でも、データとしてちゃんと保有しておきたいというリスナーもいますから。そういえば、ストリーミング関連でいうと、つい最近デ・ラ・ソウルの話題がニュースになりましたよね。もともとストリーミング解禁されていなかった彼らの初期の作品が、レーベルのTommy Boyを通じてストリーミング解禁されてしまった。メンバーはサンプリング許諾の問題があるから足踏みしていたにも関わらず、レーベル側が押し切ってしまって「訴えられたら後から考える」と言っていたみたいで。取り分もレーベルが90%でアーティストが10%というバランスだという。

Y:当時はストリーミングという概念もなかっただろうし、どの時点で取り決められた契約なんだろうね?

S:そのニュースを聞いたときに、私も「何でもストリーミングで聴けるから、自分のCDやデータは処分しちゃってもいいや」という考えに至るのは危険だなと思ってしまって。あと、10年くらい前に発表された、J.コールやA$APロッキーたちのミックステープって、一般的なストリーミング・サービスには登録されていないんですよね。そうすると、一生聴かないままのリスナーが増えていくんじゃないかと……。SpotifyやApple Musicはすごく便利ですけど、それに頼るあまり、自分のライブラリが全てそうしたサービスに頼ったものになってしまう、というのはある意味危険かな、と思ってしまいました。

Y:確かに、デ・ラ・ソウルの作品じゃないけど、ストリーミングのプラットフォームに登録されていないと、そもそも作品自体が存在しないもの、と認識されてしまいそうだよね。

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