南極大陸の氷河が急速融解、緊急調査開始ー主任研究員が語る、不確実な未来

ー今回の航海中の調査で興味深いのは、あなたがどのように歴史を遡って将来を知るか、ということです。そこで出てくる疑問は、もしもスウェイツ氷河が崩壊しようとしているのであれば、我々はどのようにそれを認知できるか、ということです。

とてもいい質問だ。近年、氷床の振る舞いについて多くのことがわかってきた。しかし、海氷崖の不安定性など新たなプロセスの発見があったこともあり、残念ながら、いくつかの事柄の信頼度が下がってきてしまった。今では、我々は不安定性を過大評価してきたのではないかとも思える。しかし、無知のまま進んで行くよりも良い。

地質学上の記録が示す通り、まだ知られざるものが多い。約1万4500年前に発生したMeltwater Pulse 1Aと呼ばれる氷床の急速な融解が、ひとつの良い例だ。最も有力な証拠によると、350年の間に海面が約50フィート(約15m)上昇していることを示している。本当に驚くべきことだ。1世紀に14フィート(約4.3m)上昇してきた計算になる。毎世紀、連続3世紀の間、西南極の氷床を失って行くようなものだ。人が経験してきた中の何よりも圧倒的に速い。これが現在起きたとすれば、沿岸の各都市に破滅的な被害をもたらすだろう。私の意見では、これがシステムにおける大きく急速な変化の発端を示すものだと思う。しかし、過去にどのような形で起きたかは正確にわからない。また、再び起きるかどうかも定かでない。

「これまでに経験したことのないものが起こりそうだ」と察知することで、気候変動の予兆を捉えようとしている人たちにとっての警戒警報となると思う。我々が発生場所やプロセスを認知するまで、過去に起きたことが今後二度と起きないとは言い切れないのだ。

本インタビューは長さを調整し、説明を加えて編集済み。

Translated by Smokva Tokyo

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