映画『バンブルビー』でザ・スミス「昏睡状態のガールフレンド」が流れた理由

『バンブルビー』全国劇場にて公開中(©2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved. HASBRO, TRANSFORMERS, and all related characters are trademarks of Hasbro. ©2018 Hasbro. All Rights Reserved.)

物語を盛り上げる「曲」にフォーカスし、そのメッセージや背景を掘り下げる連載「サウンド・アンド・ヴィジョン」。今回は劇中でザ・スミスの曲がやたらと流れる『バンブルビー』を紹介。

※この記事は3月25日発売の『Rolling Stone JAPAN vol.06』に掲載されたものです。

1987年のカリフォルニア。父親と死別して以来、孤独な日々を送る女子高生チャーリーはある日、行きつけのジャンク屋でオンボロの黄色いビートルを手に入れる。だがビートルの正体は未知の力を持つ巨大ロボットだった。驚くチャーリーだったが、ロボットに“バンブルビー”と名付けて友情を育んでいく……。

自動車や飛行機に変形する機械生命体が大活躍するSF大作『トランスフォーマー』シリーズの最新作『バンブルビー』はシリーズ屈指の人気キャラ、バンブルビーが地球にやって来た当時の出来事を描いたスピンオフ作となった。

それにしてもなぜ舞台が1987年なのだろうか。映画版『トランスフォーマー』の第一作が公開されたのは2007年のこと。それよりちょっと前の出来事でも問題ないはずなのに。答えは簡単。本作がシリーズのファン拡大と掘り起こしという二つの目的を担った戦略的な作品だからだ。

このうち「ファン拡大」のほうを担っているのが、主人公チャーリー役を演じているヘイリー・スタインフェルドだ。『ピッチ・パーフェクト』シリーズで知られる彼女は、現在最もティーン女子の支持が高い若手女優のひとりである。本作では主演作『スウィート17モンスター』で演じて絶賛を博した、こじらせティーンのキャラを踏襲。何しろチャーリーは朝の歯磨きBGMとしてザ・スミス「ビッグマウス・ストライクス・アゲイン」を聴くような女の子なのだ。

そして、もうひとつの目的「掘り起こし」を担っているのが、そのザ・スミスを筆頭にした1980年代産のポップソングだ。もう、映画全編で流れまくり。チャーリーのバイト先ではワン・チャンの「ダンス・ホール・デイズ」、バンブルビーに乗って海岸線を疾走するときはティアーズ・フォー・フィアーズの「ルール・ザ・ワールド」が流れる。シンプル・マインズの「ドント・ユー」に至っては裏主題歌と言ってもいいくらいだ(というか映画自体が、同曲が主題歌として使われた1985年作品『ブレックファスト・クラブ』へのオマージュに満ちている)。    

こうしたポップソングが何を掘り起こすのかというと、オリジナル版『トランスフォーマー』の視聴者たちだ。日本の玩具を原作にしたアニメの第一シリーズが、アメリカで放映されたのは、1985年から87年にかけて。当時、番組を夢中で観ていた子どもたちも今や10代の娘がいてもおかしくない歳になった。そう、本作は親と子どもの両方の世代にアピールした作品なのだ。いや、後者へのアピールのほうがより強いかも。「ヘイリーの主演作を観たいから連れていって」と娘に言われてシネコンで一緒に観たところ、ノスタルジックなネタの洪水で親のほうの涙腺が決壊なんて光景が容易に思い浮かんでしまう。

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