美貌と資質のおかげ? NYの富豪たちを手玉に取った「ソーホーの詐欺師」

ニューヨーク州高位裁判所の公判中、休廷後に法廷へ戻るアナ・ソロキン被告。(Photo by Richard Drew/AP/REX/Shutterstock)



裁判ではまた、デニス・オナバジョ氏の証言にも注目が集まった。元フォートレスバンクの銀行員で、デルヴィー被告が数百万ドルの融資を申請した際に資産査定を担当した人物だ。オナバジョ氏の証言によると、フォートレスバンクは独立した2社に被告の経歴調査を依頼したところ、資産を相続したという彼女の主張に関して疑わしい点が出てきたという。

「弊社はミス・デルヴィーにこの点をお伺いいたしましたが、納得できるお返事はいただけませんでした」とオナバジョ氏。「ピーター」と名乗るデルヴィー被告の会計士から届いたメールによれば、彼女の資産は「中世時代の膨大なアートの所蔵品」によるものだと主張しているが、これも確証にはいたらなかった。オナバジョ氏の元上司、スペンサー・ガーフィールド氏も先週証言台に立ち、デルヴィー被告の信用状の裏付けが取れず、また被告も期日までに手付金を用意できなかったため、フォートレスはデルヴィー被告との取引を終了することになったと証言した。

スポデック弁護士は、フォートレスの社員としてデルヴィー被告の融資申請の査定を担当したオナバジョ氏を、本件の「重要証人」と位置づけた。デルヴィー被告が融資を受けるために偽造文書を提出したのは事実だが、だとしても、彼女は融資の承認を受けるところまで至らなかった、というのが彼の主張だ。「詐欺の法則に従うなら、アンナは危ない橋を渡って犯罪すれすれの行動をとらなくてはなりません。私の見解では、彼女がどんな行動をとったにせよ、罪を犯すところまでは行きませんでした。手続きの各段階で次々と問題が生じたからです」

オナバジョ氏は、デルヴィー被告とフォートレスの関係が終了した後も、彼女と会っていたとも証言した。彼女が滞在していたホテル、11 Howardで3回夕食を共にした他、Sant AmbroeusやLe Coucouというマンハッタンの2カ所のレストランで食事したという。反対尋問でオナバジョ氏は、被告に対して恋愛感情はなかったと発言。あくまで自分の目的は、食事やお酒をかわしながら「仕事上の関係を深めること」だったと言った。これを聞いたスポデック弁護士は法廷で大笑いし、オナバジョ氏が被告に送った一連の口説きメールに言及した。「この男は、彼女がオフィスで提出したものをとことん疑ってかかったというのに、彼女とネットワークを広げたいですって? どうも解せませんね。証拠からも明らかなように、彼の目的は恋愛方面だったと思います」と述べた。

デルヴィー被告は重窃盗、重窃盗未遂、利益窃盗の罪で起訴されている。有罪となった場合、禁固15年が求刑される。

彼女の裁判が全米の関心を集めた背景には、第1回の審問でMiu Miuのミニドレスを着用して出廷するなど、彼女のハイエンドな法廷ファッションに対する世間の高い関心がある。最近のデルヴィー被告のいでたちは以前よりも控え目で、月曜はベージュのクルーネックのセーターにオーダーメイドの黒のパンツ姿で現れた(デルヴィー被告の地味な服装は戦略かと尋ねられたスポデック弁護士は、「コンサバな格好のほうが適切でしょうね。裁判所はファッションで自己主張するような場所ではありませんから」と述べた)。

世間がこの裁判に注目するもうひとつの理由は、ファイア・フェスティバルの創業者ビリー・マクファーランドに始まり、テラノス社の共同創業者エリザベス・ホルムズにいたるまで、「ペテン師」に対するカルチャーブームにも関係しているようだ。裁判でスポデック弁護士は意図的に、デルヴィー被告を「策に長けた詐欺師」ではなく、アメリカのエリート層の社交場に出入りするために、工夫を凝らす技を自ら習得した女性として表現した。「彼女がしてきた様々な悪事がなんであろうとも、それは稀にみる技です。スティーヴン・スピルバーグからビル・ゲイツ、スティーヴ・ジョブスなど、憧れの人物がみな備えていた技能です――こうした人々はみな、自分の資質を活かして、ゼロから成功を収めています」

億万長者らしく振る舞うことに長けた彼女の資質が、富裕層や有力者たちの門番たちの信じやすさと相まって、長期にわたって詐欺を働く土壌を生んだ。「ミス・ソロキンは、周りが望む通りに自分を演じた。するとドアが開いたのです」

あるいはこうかもしれない。Blade社がデルヴィー被告に前金無しでのフライト予約を許可した理由を尋ねられたマコーマック氏が証言したように、「我々はみな、人は誰でも真実を言うものだと信じていたのです」

Translated by Akiko Kato

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