MySpaceの一斉アーカイヴ消去に見る、ネット上で保存する思い出の行く末

先月、MySpaceは、2003年〜2015年にアップロードされた全てのコンテンツを削除したことを明らかにした。インターネットに依存するティーンエイジャーがどっぷり浸かれる初のネット上のスペースとして一斉を風靡した「MySpace」。アーカイヴを削除したことで、世界中の多くの人たちが悲しみに暮れた。インターネットに思い出をアーカイブすることについて、今一度考えてみる。

2019年3月18日、長い間MySpaceユーザーの間で噂されていた事実が明らかになった。MySpaceが、2003年〜2015年の間に同プラットフォームへアップロードされた大量のコンテンツを削除したというのだ。週末の間、同ソーシャル・ネットワーキング・プラットフォームには「サーバー移行プロジェクトの実施により、3年以上前にアップロードされた写真、動画、音声の全ファイルは、今後MySpace上で表示したりダウンロードしたりすることができなくなるでしょう」とのバナーが貼られた。詳細の説明についてMySpaceは固く口を閉ざしている。しかし、今回のデータ消去はサーバー移行に伴うシステムの“障害”とはあまり関係がなく、それよりもMySpaceの新たなオーナーであるメレディス・コーポレーションが古いデータの維持にコストをかけるのを嫌ったためだとする声もある。(同ソーシャルメディア・サイトは、コメントの求めに応じていない。)

このニュースを聞いて「あれ、MySpaceってまだあったの?」という人もいるだろう。2011年に再起をかけたMySpaceだが、2016年にタイム・インクへ売却され、以降長期に渡りもがき苦しんでいる。(事実、同プラットフォームは2018年より密かに音楽ファイルを削除し始めていたと伝えられている。)しかし今回の措置によって大きな影響を受けた人も多い。特に、自分の音楽をシェアしプロモーションするためにMySpaceを使い始めたミュージシャンたちへの影響は大きい。アーティストの多くは早い時期にSoundcloudのような別プラットフォームへ移行していたものの、reddit上には、数年分の自分の作品にアクセスできなくなってしまったミュージシャンたちからの助けを求める悲痛な声が溢れている。ある見積りによると、1400万組のアーティストがアップロードした約5000万のファイルが失われたという。

また今回のデータ消去は、MySpaceで育った多くのミレニアル世代のノスタルジーも掻き立てた。ピーク時にあった2006年、MySpaceは1億ユーザーを抱え、その多くは青春真っ盛りの年代だった。Friendsterが廃れFacebookが盛り上がるまでの数年間をティーンエイジャーとして過ごした人たちにとって、MySpaceは正に良くも悪くも(悪い部分が大きかっただろうが)、“ネット漬けになる方法”を教えてくれるインターネット初心者向けの入門コースだった。

誤解のないように明らかにしておくと、我々のほとんどとまでは言わないが、多くの人たちは今回のニュースを歓迎しているようだ。自らのMySpaceの写真を見返してみると、17歳の自分の姿や、彼女のために立ち上げようとしていたブランド、ノキアで撮影した唇を尖らせて撮影した大量の白黒写真、ジミ・ヘンドリックスにヒントを得たユーザー名、いかにも“なめるなよ”というポーズを取った姿(読者の皆さん、本当の私は絶対に他人に気を遣う人間です)などが出てきて、泣きたくなった。当時の私の髪型が凄かったのは、インターネット上に溢れるさまざまな表現に対しての精一杯の反発だった。それらのコンテンツがデジタルの記録上から一掃され、雇い主や他人のGoogle検索結果に二度と表示されなくなることは、我々にとって喜ばしいことだ。

Translated by Smokva Tokyo

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