ロイ・エアーズの証言から解き明かす、ブラックミュージックの先駆者となった4つの理由

2019年3月にブルーノート東京で来日公演を行ったロイ・エアーズ(Photo by Great The Kabukicho)


2.カマシ・ワシントンまで連なる、「作編曲に特化したジャズ」からの影響

その一方で、同じく『He’s Coming』に収録されたアレサ・フランクリンの名曲「Day Dreaming」に関しては、主旋律をロイがヴィブラフォンで奏でていて、即興も交えながら解釈していくロイの演奏に、バンドがフレキシブルに寄り添いながらメロウにグルーヴしていく。そんなアレンジがこのカバーを特別なものにしている。



ロイの音楽は、彼がジャズミュージシャンだったこともあり即興性が高いと思われがちだが、歌もののソウル・ミュージックのようにきっちり作曲されている曲が実際は多い。ただ、それが多くのソウルやファンクと異なるのは、ソロのスペースが用意されていたり、ジャズ由来のハーモニーやコード進行があったり、ジャズにも精通したミュージシャンがその場で曲の形を崩さない程度に微妙な変化を加えていることや、時にストリングスやシンセを使いオーケストレーションの縮小版のようなアレンジが施されていることなどが理由として挙げられる。

そんな絶妙なバランスを模索できたのは、ジュリアード音大出身でクラシックを学んでいたエドウィン・バードソングが隣にいたのはもちろんとして、ロイ自身のジャズミュージシャンとしての特殊な出自も大きかったのだろう。彼はビバップ出身のミュージシャンのように即興に比重を置いていただけでなく、映画音楽が盛んなLAに根付いていた「作編曲に特化したジャズ」を演奏してきた。ウェストコーストジャズを代表するチコ・ハミルトンのバンドや、LA屈指のジャズ作曲家であるジェラルド・ウィルソンのビッグバンドに参加していたことは、彼の音楽にも影響を与えているはずだ。



―あなたはジェラルド・ウィルソンのオーケストラでも演奏していますね。

ロイ:ジェラルドは私と同じおとめ座なんだ。ジェラルドは素晴らしい人で、私のことを気に入ってくれていて、私のために美しい曲を書いてくれたこともある。

ロイ自身もこう話しているように、彼が67年にリリースした『Virgo Vibes』には、ジェラルドが彼のために書いた「In The Limelight」が収録されている。ジェラルドはボーカリストのバックに起用されることも多く、レイ・チャールズやレス・マッキャンともコラボレーションしている。そんなジェラルドとの交流もロイを刺激していたのかもしれない。ちなみに、晩年のジェラルドに師事していたのが、今をときめくカマシ・ワシントンだったりする。


Translated by Keiko Yuyama

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