ティム・バートン監督『ダンボ』映画評 実写版ダンボは愛くるしさの極み

物事はすべて、誰もが予想したとおりに進んでゆく。予定調和こそが脚本の原動力であり、サーカスの根源でもある。ロシャン・セスは蛇使いのプラメシュ・シンハ役、デオビア・オパレイは怪力男ロンゴ・ザ・ストロンゴ役、シャノン・ルーニーは見世物マーメイドのミス・アトランティス役。こうしたキャラクターは、ヒュー・ジャックマン演じるP.T.バーナムが『グレイテスト・ショーマン』で集めた一団にあまりにも瓜二つなので、今にも歌い出すのではないかと期待してしまう。事実ルーニーは、アニメ版『ダンボ』のオスカー受賞曲「私の赤ちゃんダンボ」を口ずさむ。

バートンは夢の世界を生み出した――撮影監督のベン・デイヴィス(『ドクター・ストレンジ』)、舞台美術のリック・ハインリクス(『スターウォーズ/最後のジェダイ』)、衣装デザイナーのコリーン・アトウッド(『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』)、そしてバートンとのコラボレーションはこれで17作目を数えるダニー・エルフマンに感謝。超人気のサーカス、ヴァンデヴァーのドリームランド・コロシアムは、ワンランク上の「やりすぎ感」がいい。キートンの狂気じみたオーバーな演技もしかり。ダンボと母親ゾウが引き離される場面を見て、あきらかに親子を隔離したトランプ大統領の移民政策のことだと、政治的な意図を見る人もいるだろう。あるいは、今の世の中ハッピーエンディングは子供だましだ、なんて平凡で大人しく、単調で生ぬるい映画だという人もいるだろう。なんとも残念な意見だ。ダンボの中核にあるのは、バートンお得意のいたってシンプルな物語。究極のアウトサイダー、ダンボを筆頭に、自分たちを化け物扱いする社会の一員になることを拒み、そこから逃れようとするはみだし者たちの物語なのだ。そうした主張をするにあたり、バートンにはハリウッドの華々しさや、いわゆる三面記事的なものはいらない。あれこれ思案する観客の前をこの映画が通り過ぎたとき、そこで初めてダンボは自由の身となり、空高く舞うのだ。

英語版 予告編


日本語版 予告編

『ダンボ』

監督:ティム・バートン
キャスト:コリン・ファレル、マイケル・キートン、ダニー・デビート、エバ・グリーン 他
3月29日(金)より全国ロードショー
https://www.disney.co.jp/movie/dumbo.html

Translated by Akiko Kato

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