子どもが親にストリーミングを教える時代へ 米ラジオ業界の危機

Edison Research社の調べによると、親世代の76%と子ども世代の60%が「音楽を聴くことは親子の絆を深める」という設問にイエスと答えた。「これを素直に受け止めていいものか、それとも含みがあるのかはわかりません――『ママはクールだから、きっとこういう音楽も好きなはず』という意味かもしれませんし」とアイヴィー氏は付け加える。彼女自身も3歳の子供を持つ母だ。「あるいは(逆に)、『クールじゃないよ、もっとクール度を上げなくちゃ』という意味かもしれません」

いずれにしても、ラジオは存続の危機に瀕しているようだ。

図式は単純だ。Edison社の調査によれば、米国親世代の間ではラジオ人気はストリーミングのおよそ2倍。ティーンの間でも、ラジオは音楽を聞く手段としていまだトップではあるものの、ストリーミングが急速に追い上げその差を縮めている。2つの世代が衝突せずスムーズに融和すれば、おのずと浸透作用が起こり、親世代はもっとストリーミングを聞くようになる。調査対象となった1999人の親のうち69%が、「10代の子供から最新テクノロジーを手助けしてもらった」という設問にイエスと答えた。さらに52%が、ストリーミングサービスの存在を子どもから聞いたと答えた。

「子どもたちが(Spotifyの使い方をデモンストレーションして)私にわかりやすく教えてくれました」と、とある母親はEdisonのプレゼンテーションで語った。「おかげで、聞きたい曲がずっと簡単に聞けるようになりました」

アイヴィー氏は、今回のEdison社の調査は「悲観的にとらえるべきものではなく、またラジオを蔑むものでもない」と強調したうえで、「音楽体験の多くはいまもFMラジオです」と付け加えた。「ラジオが広大な層にアピールしていることは忘れられがちです」

確かに、ラジオのリスナー層は国内の隅々にまで広がっている。「わが社は毎月アメリカ人の91%にリーチしています」と言うのは、iHearMediaのCEO、ボブ・ピットマン氏。「10代の若者に関しても、週間リーチは93%です。(ストリーミングの)未来に誰もが浮足立っていますが、でも思い出してください、誰も未来のことはわからないのです」 彼は別の調査を引き合いに出し、ラジオを聞くと答えた回答者は84%にも上っていると指摘した。この数字は2011年から2018年までまったく変わっていない。この間SpotifyやAppleMusicに忠誠を誓ったリスナーは13%増えている。

最終的に未来が訪れたとき、ストリーミングとラジオは上手くやっていけるだろうと、ピットマン氏は確信している。「ストリーミングを競争相手だと考えたことはありません――両者は協調できると思いますよ」と彼は言い、現在のストリーミングライブラリをかつてのCDコレクションにたとえた。「CDコレクションは、新しい音楽を発掘するには不向きです。アメリカ人の70~80%が、主にラジオから新しい音楽を発掘していると回答しています。CDを所有し、かつラジオも聞く。逆説的かもしれませんが、これぞ我々にとって理想のリスナー像です――我々は彼らに、もうひとつの選択肢を提供しているわけです」

Translated by Akiko Kato

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