『ブラック・クランズマン』映画評:スパイク・リーの抱腹絶倒な最高傑作

『ブラック・クランズマン』は、リーとデヴィッド・ラビノウィッツ、チャーリー・ワチェル、ケヴィン・ウィルモットが、ストールワースの著書をもとに脚色。撮影監督のチェイス・アーヴィン、編集のバリー・アレクサンダー・ブラウン。作曲家のテレンス・ブランシャードなど、スタッフ全員が総力を挙げて取り組んだ(『ゲット・アウト』で世間を騒がせたジョーダン・ピールがプロデュースチームに顔を並べているが、まあいいだろう)。とはいえ、この作品ではさすがにリーも息切れしたようだ。人間の英雄的な面と卑劣な面、善悪の両極端を行ったり来たりするという荒業に挑戦したのだから。映画のクライマックス、ロンとフィリップがBSUを狙うKKKから追われる中、突如現れる暴力映像には驚かされた。バージニア州シャーロッツヴィルで起きた白人至上主義者とデモ参加者との衝突、「双方の側に責任がある」と述べた悪名高きトランプのスピーチ、いまだ現役の扇動者デュークが大統領のコメントを称賛するシーン。なにも現実のひとこまを挟み込まなくてもよかったのでは、という意見もある。たしかに、風刺や単純化に走るなど、リー監督の舵とりがおぼつかない箇所もある。だがそうした欠点があろうとも、大勝利を収めたこの作品が――今年の最高傑作のひとつだ――自分らしさを取り戻し、世間に訴える力を再び手に入れた映画界の巨匠の情熱の結晶であることに変わりはない。


『ブラック・クランズマン』

監督:スパイク・リー
脚本:チャーリー・ワクテル、デビッド・ラビノウィッツ、ケビン・ウィルモット
出演:ジョン・デビッド・ワシントン、アダム・ドライバーほか
3月22日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開
https://bkm-movie.jp/

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE