ラブリーサマーちゃん自宅取材、10枚のアルバムから辿る彼女の音楽愛

ラブリーサマーちゃん、自宅の宅録スペースで撮影。(Photo by Takanori Kuroda)



8. Shocking Pinks『Shocking Pinks』(2007年)

─これはニュージーランドの才人、ニック・ハートによるソロプロジェクトの代表作ですよね。

ラブサマ:こういうローファイな音像と、ヘロヘロなボーカル、淡々としたドラムってやっぱり好きだよなあって思うんですよね、特に目新しいことはやっていないんだけど。ワンマンのタイトルにもなっている新曲の「ミレニアム」は、4曲目の「Second Hand Girl」という曲を参考にしました。クリーンなギターが途中からメチャクチャに歪んで繰り返されて、ドラムとベースは平熱で続いていて、静かに少しずつ汗をかいていくような曲です。


※4月22日追記:ラブリーサマーちゃんの最新2曲入りシングル「ミレニアム」が同日配信スタート。



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9. 横沢俊一郎『ハイジ』(2018年)

ラブサマ:横沢さんは、2015年くらいに音楽を始めた宅録の人で、今は30歳くらいなのかな。この人の書く曲を初めて聴いたとき、すごい感激して。特に歌詞ですね。私、歌詞を書くときに心がけていることがいくつかあるんですよ。「嘘は書かない」「自分の知っている言葉でしか書かない」「誰にでもわかる平易な言葉で書く」という。要は、「個人的なことを、素直に本当のままで書く」ということが大事で。

それをしていない人って、聴いてて一発で分かるんですよね。「ここにこういうメロがあるなら、こういう言葉をハメたらいいんでしょ?」みたいな。「それっぽい、ありがちな言葉をアサインすればいいんだよね、ハイハイ」みたいな。あるじゃないですか、その人の生活している風景が、全く思い浮かんでこない歌詞。“君、あなた、踊る、涙、ありがとう”みたいな。

─(笑)。

そういうのを見ると、メロディに言葉を乗せるということをナメてるだろ?と思ってしまう。苦手なんですよね。では、その違いってどこにあるのかなと考えると、色んな要素の一つに「使う名詞の選び方」があると思っていて。例えば横沢さんに「マロニー」という曲があるんですけど。“マロニー”という単語を使って曲を書こうなんて、マロニーを作ってる会社の人くらいしか普通思わなくないですか?

─はははは!

ラブサマ:それを歌おうと思った横沢さんの、そのチョイスの痕跡こそが「彼だな」と思わせるし、その連続こそが本当の歌詞だと思うんです。


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─なるほど。よく分かります。

ラブサマ:あと、自分の気持ちを歌うときに、言葉を選ぶ精度が横沢さんはすごく高いんですよ。例えば、「好きな女の子がいるけど、その人とうまくいかない」みたいなことを歌いたいときに、“君が好きだけどうまくいかないね”って歌ったらもう、それまでじゃないですか(笑)。そうじゃなくて、そこで歌われている恋が、他のどれとも違う恋であるように聞かせることが、歌の美味しいところだと思うんですよね。

横沢さんの場合はそれを、“遠い君が遠いままだなんてとても耐えられない”って歌ったんです(「遠い人」)。それを聴いた時、うまくいかない状況を「遠い君」という言葉で表せるんだと思って感動したんですよね。「遠い君」って日常会話で使ったら違和感のあるフレーズだけど、それをメロディに乗せて歌えば違和感がなくなるというのも、歌の面白いところだし。とにかく、言葉を選ぶ精度をこれくらい高く出来たらいいなと私は思っているんですよね。



10. Ryoji Ikeda『Test Pattern』(2008年)

─最後は池田亮司です。このセレクトは意外でした。

ラブサマ:「どこをどう影響受けたの?」と思われるかも知れないですね。「池田さんみたいな音楽をやってみたい!」というのではなくて、刺激を受けた1枚として選びました。

昨年の7月くらいに、池田さんの作品の上映イベントがあったんです。この「Test Pattern」という音楽が流れ、ものすごくミニマルな映像が再生されていくという。1時間ちょっとくらいの展示を観に行って、そのときにメチャクチャ感激したんですよね。それは何に対してか?というと、音に対する根源的な問いというか。例えばコップを叩いたって音は出るけど、それが人間にどんな作用を及ぼすのかみたいなことを、色々と考えたんです。



─「音に対する根源的な問い」ですか。

ラブサマ:人間の声ですら、サイン波やホワイトノイズをめちゃくちゃうまく組み合わせれば、理論的には再現可能らしいんですよね。「え、じゃあ音ってなに?」と思いましたし、「人間は、低い音が定期的になるとなぜ気持ちいいのか」とか、「なぜ4の倍数で(リズムを)繰り返されると落ち着くのか」とか、「音が終わる瞬間や、音と音が重なる瞬間が気持ちいいのはなぜか」とか色んな疑問が湧いてきて。あと、でかい音で流されると、電子音でもめっちゃシューゲイザーに聞こえたりするのはなぜだろう、そもそもデカい音はなぜ眠くなるのかとか……。そんなことを考えさせられて、とても感銘を受けたんです。

あと、「無音」というのも大事なのだなと。音楽は「音の芸術」だけど、音そのものだけが芸術というわけじゃなくて。音が「無い」瞬間が、いかに大切か?みたいな。池田さんのイベントは、そういう「人が音を聞くときの感じ方」についてハッとさせられる経験でした。私がやっている音楽スタイルとは全く違いますけど、音に対してはもっとストイックなフェチになるべきだなって。


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─以上、アルバム10枚を紹介していただきました。お疲れ様でした。

ラブサマ:こちらこそありがとうございます。好きな音楽についてこんなに話せるなんて幸せです……(笑)。

─でもホント、どうして4の倍数の繰り返しは落ち着くんでしょうね。

ラブサマ:なんなんでしょうね。人間は二本足で歩くからかな。これが3本足の動物だったら、気持ちいい音のリズムも変わっていたかもしれない。

─なるほど! ……え、でもワルツは気持ちいいじゃないですか。

ラブサマ:あー確かに! そしたら「足の本数理論」は成立しなくなっちゃいますね(笑)。


Photo by Takanori Kuroda



ラブリーサマーちゃん ワンマンライブ
「ミレニアム」

日時:2019年4月30日(火・祝)
場所:恵比寿リキッドルーム
open 17:00 start 18:00
出演:ラブリーサマーちゃん(BAND SET)

料金(ドリンク代別);
前売り3000円/当日券3500円

※ミレニアム キャッシュバック
2000年生まれ以降の方は、当日受付にて身分証提示で1000円キャッシュバック

詳細:https://www.liquidroom.net/schedule/lovelysummer20190430

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