ラブリーサマーちゃん自宅取材、10枚のアルバムから辿る彼女の音楽愛

ラブリーサマーちゃん、自宅の宅録スペースで撮影。(Photo by Takanori Kuroda)



5. MGMT『Little Dark Age』(2018年)

─続いては、MGMTが昨年リリースした4年ぶりの通算4枚目。

ラブサマ:一番有名な『Oracular Spectacular』(2007年)もメチャメチャ好きで、聴きまくった青春の1枚なんですけど、その彼らが新しいアルバムを出してくれるということで、大変期待して聴いたらやっぱり最高でした。特に、なんともいえない不穏な感じがすごいというか。私がこのアルバムを聴いていたのは、去年の梅雨の時期。結構、アホっぽい音も入っているし音像も可愛らしくて、ビートとかもチープなかんじだしノレるのに、なんか不穏な感じがするんです。ちょっと調律の狂った古いピアノみたいな。

ビートルズの「Revolution 9」ってメチャクチャ怖いじゃないですか。あれを希釈した不穏さというか。私、そういうのに惹かれちゃうことに最近気がついたんですよ。ディアハンターの新譜(『Why Hasn’t Everything Already Disappeared』)も不穏ですよね。あれ、なんなんでしょう。ボーカルとかギターのリバーヴの処理なのかなと。どう思います?

─うーん、ハープシコードやファルフィッサ(オルガン)のちょっとピッチがずれている感じとか、シンセの揺らぎとか、そういうものも影響してそうですよね。

ラブサマ:あ、なるほど。私の曲作りって、ギターをジャーンってコードで鳴らして、ベースはルートに5度を足すくらい。ドラムはAddictive Drums(ドラムのソフト音源)の一番シンプルなやつをアサインして8ビートみたいな。だからバカっぽい曲しか出来ないんですけど(笑)。こういう、不穏な曲を作りたいって最近は思っているんです。なんか、ちょっと怖いものって絶対みんな気にしちゃうじゃないですか。好きか嫌いかじゃなくて、なんか気になってしまう。「畏怖」の気持ちと「憧憬」って近いですよね。




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6. Only Real『Jerk At the End of the Line』(2015年)

ラブサマ:私はリズム感が致命的にないからラップは出来なくて。試しにやってみたら、お母さんに「さっき念仏唱えてた?」って言われるくらいムリなので。でもヒップホップには興味があって、色々聴いています。ケンドリック・ラマーに、“I got, I got”って歌う曲あるじゃないですか(「DNA.」)。私、下の名前が「愛夏」なので、たまに1人で替え歌やってるんですよ。“アイカ、アイカ”って(笑)。

─何ですかそれ(笑)。

ラブサマ:それはそれとして、今メチャメチャ好きなのがオンリー・リアルですね。トラックメイキングやボーカルの表現にUKロックを感じるというか。ブリットポップのエッセンスを感じるところが特に好きで。彼はバンド系の音楽が好きらしく、(UKでは)ヒップホップやグライムがすごく流行っているけど、それより自分の好きなバンドと一緒にラップをする方が向いているとかインタビューで言ってて。この人、音楽に対するマインドがめっちゃ自由だなと思いました。

オンリー・リアルやラット・ボーイを聴いていると、今っぽさと懐かしさが同時に存在している気がして。今後、UKロックが進化していく中で、こういうヒップホップとの融合は一つの道になっていくのかも知れない。私もドラムを電子音にしたり、アホっぽいピャー!という音を入れたり、そしていつかはラップしてみようかな〜みたいな。新しいチャレンジに目を向けさせてくれる1枚ですね。




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7. Billie Eilish『WHEN WE ALL FALL ASLEEP,WHERE DO WE GO?』(2019年)

ラブサマ:「when the party’s over」は新しいアルバムから先行リリースされた曲なんですけど、もう聴いた瞬間ゾワゾワして。気持ちが先走ってセレクトしました(※)。この人は、とにかく声が美しすぎてドンピシャで好きなんですよね。自分と比較するのはおこがましいけど、あまり声を張らないタイプの女性ボーカルじゃないですか。私もそうなので親近感を持ちましたし、「このくらい声のニュアンスを大事にしたいな」と思いました。

※『WHEN WE ALL FALL ASLEEP,WHERE DO WE GO?』は3月末リリース、取材時はアルバム発表前だった。

─とにかく「声」を大事にしたサウンド・プロダクションですよね。

ラブサマ:もう、神がかってるんです。努力と天性の掛け合わせというか。声そのものが素晴らしいのはもちろんのこと、その声をメロディに乗せた時の、ニュアンスの付け方や感情の込め方に、「歌と声ってやばい!」と改めて感じましたね。私もメチャクチャいいスタジオで、いいエンジニアとボーカル録りをしたくなりました。

もちろん「声」だけじゃなくて、トータルで素晴らしいです。歌詞もメロディもエンジニアリングも。低音の作り込みもヤバイ。音に対する美学がひしひしと伝わってきて身が引き締まる思いでした。まだ10代なんですよね。それであの歌詞って(笑)。



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