YOGEE NEW WAVESインタビュー「過去を愛でる瞬間と、過去を脱ぎ捨てる瞬間はどちらも必要」

YOGEE NEW WAVES(Photo by Tetsuo Kashiwada、Styling by Eiji Takahashi、Hair and Make-up by Tsuneaki Oikawa[darlin.])

4人組ロックバンド、YOGEE NEW WAVESの3rdアルバム『BLUEHARLEM』がリリースされた。

本作は、オリジナル・アルバムとしては前作『WAVES』より2年ぶり、昨年リリースされた6曲入りのEP『Spring Cave e.p.』を経て完成したものである。これまでの作品と比べてややテンポを落とし、メンバーそれぞれのグルーヴやアーティキュレーション、音と音の隙間に漂う響きを大切にしたアンサンブルが、角舘健悟の紡ぐメロディやどこか不思議な歌詞世界をより引き出すことに成功している。過去曲からのモチーフや、ルーツ・ミュージックからの引用を随所に散りばめるなど、遊び心に富んだアレンジにはどこか余裕をうかがわせる。

アルバムごとにスクラップ・アンド・ビルドを繰り返し、常に自身の音楽性をアップデートしながら進み続けてきたYOGEE NEW WAVES。その原動力は一体どこから来るのだろうか。メンバー全員に話を聞いた。

─アルバムとしては、前作『WAVES』からおよそ2年ぶりとなりましたね。

角舘健悟(Vo, Gt):本当にスローペースで、待っててくれているファンには申し訳ないんですけど。時間かけたつもりはなくても、気づけばこんなに経ってしまいました。



─今回はテーマのようなものはありましたか?

角舘:このアルバムは、「島三部作」の最終章という感じですね。そういうと、「最初から考えてたんですか?」と訊かれるんですけど、そんなことはなくて。ファースト・アルバム『PARAISO』を作っている時には、先のことは考えていなかったし、次の『WAVES』では「『PARAISO』という島から抜け出そう」と思って「波」に乗ったわけですけど、このアルバムを作っている時には「何処かにたどり着いたぞ」という感じがずっとしていて。「この島の名前を付けなくちゃなあ」と思って『BLUEHARLEM』になったんです。





─あらかじめストーリーがあったわけではないと。

角舘:漫画『HUNTER×HUNTER』の作者の冨樫(義博)さんが、「ある設定にキャラクターを置けば、勝手に物語が進んでいく」と言ってましたけど、それと同じですね。YOGEE NEW WAVESというバンドが勝手に進んで、ここまでたどり着いたという感じなんです。しかも、このアルバムの9曲目、10曲目あたりでもう僕ら島を出てしまってますからね。

─『PARAISO』を出て、新たな島に“たどり着いたな”と実感したのはどのタイミングだったのですか?

角舘:昨年、『Spring Cave e.p.』という6曲入りのEPをリリースしたんですけど、あの時には「洞窟に着いた」と思ったんですよ。その洞窟の奥へと進んだ先には、一体なにがあるのだろう?と個人的にはすごく楽しみにしていて。それが「BLUEHARLEM」だったわけです。

─そういったイメージはどこから着想を得たのだと思います?

角舘:昨年10月に僕はメキシコへ行ったんですけど、ハニツィオ島という、大きな湖池の真ん中にある島を見て「うわあ、すげえいい感じの島だなあ」と思った時になんとなくイメージが湧きました。

─「BLUEHARLEM」という島の、具体的なイメージはありますか?

角舘:実在すると仮定して話すと、この島は「祝祭の島」と呼ばれていて、そこでは「青」が許されているんです。つまり「ブルーな感情」。それがないと「祝祭」もない。つまり「陰と陽」ですよね。ハッピーな状態とブルーな状態は、常に行き来している。「ブルーのないハッピー」はやけに味気ないというか。人の温かみを感じられるような「ブルー」を経由した「ハッピー」に僕は、リアリティを感じるんです。

─そういう世界観というものは、アルバムを作る前に決めてるんですか?

角舘:基本的には、曲を書いているときは半分「野性」になっているので、他のことを考えていないんです。そのとき考えていたことや、気になっていることがふんだんに盛り込まれていて。そうやって出来た曲を、俯瞰してみると何かが見えてくるんですよね。今回だったら「島にたどり着いたんじゃないか?」みたいな。

─野性となって「無意識」の中に降りていき、そこで掴み取ったものを「意識」の下で並べてみたら、そこに何かしらの意味が生じて初めて何が言いたかったのかが分かる、と。

角舘:そうですね。で、そうやって作った曲をメンバーたちが咀嚼し音に変えてくれて、それを聞いたお客さんが当たり前のように受け止めてくれている状況がもう、「ミラクル」としか言いようがないんですよ(笑)。ミラクルがずっと連続しているような感じ。「これ以上、何を欲しがることがあるだろう?」って思います。

例えば「Bluemin’ Days」の“こうごうしく フレアを撒き散らす月”というラインのところでボンちゃん(竹村郁哉)が、ギターでピュン!って音を出すんです。「これはね、車に乗ってて外灯が残像を作っていく感じを表現してるんだよ」って説明してくれるんです。もう、最高じゃないですか(笑)。その時点で僕だけのイメージだった楽曲に、彼のイメージが足されたわけですよね。

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