凄惨な殺人事現場専門の不動産鑑定者が語る、難あり物件のあれこれ

Steve Granitz/WireImage

世界貿易センタービル、ジョンベネちゃん事件の自宅から、O・J・シンプソンのロサンゼルスにある自宅の売却の仲介まで、史上最も悪名高い数々の犯罪現場となった不動産を鑑定してきた男がいる。悲劇を体験した人々を助けるという使命を持ち、数々の難あり物件を担当するランドール・ベルが、殺人現場となってしまった物件のあれこれをローリングストーン誌に語ってくれた。

「世にも奇妙な話をしてあげよう」と言うランドール・ベルの声ははずんでいた。だから私は彼が、幼少時代の楽しかった思い出話や、彼の好きなベン&ジェリーズ・アイスクリームのフレーバー・ランキングでも語るものだと思っていた。ところが彼は、自分が鑑定した不動産の話をし始めた。ある家族が最近引っ越した物件には、娘のクローゼットに弾痕が見つかったのだ。家族の父親が銃弾の撃ち込まれたと思われる方向を辿ってみると、悲惨な犯罪の行われた地下室へと行き着いたという。

ほとんどの人は時間が経ってもそのような現場を避けたいものだが、ベルはそのような現場を異常とは感じない。社会学の博士号を取得した彼は、この数十年間、不動産鑑定士として殺人、犯罪、大惨事の現場など“いわくつき”の物件を扱ってきた。彼はこれまでに、ニコール・ブラウン・シンプソンの殺害現場となった家、9.11に巻き込まれたユナイテッド航空93便の墜落現場、ヘヴンズ・ゲート信者が集団自殺した邸宅、マンソン・ファミリーの殺人現場となった物件などを扱ってきた。彼のクライアントは、保険会社、法律家、連邦政府機関、“食卓を囲んでいた家族”まで、基本的に悲劇的な事件の関係者たちだ。彼は物好きという訳ではなく、悲劇を体験した人々を助けるという使命が動機になっている、と彼は強調する。

「理由ははっきりしないが、私は高いレベルの心的外傷にも対処できる」と彼は言う。「自分のキャリアを振り返ってみると、私はずっと、とても悲惨な状況を経験した人々の支援に関わってきた」

ローリングストーン誌ではベルに密着し、カルト教団や薄気味悪いヘヴンズ・ゲート事件の邸宅のほか、ジェフリー・ダーマーの不動産が特別な理由などについて話を聞いた。

ーローリングストーン:今の仕事を始めた具体的なきっかけは何でしょうか?

ランドール・ベル: 簡単に言うと、ここ南カリフォルニアで数年間、商業不動産の鑑定をしていたが、正直に言って少々マンネリ化していた。そこでロースクールを受験したところ、奇跡的に合格してしまった。学校の始まる前日、裏庭のプールで考えた。「さて、世の中にこれ以上法律家を増やす必要があるのだろうか」と思った。「自分の持つスキルセットを活かして価値を生み出したり価値を測ったりすることに利用できないだろうか。そして逆に、価値を落としてしまっているものは何だろうか」と考えた。これは魅力的な仕事になりそうだと考えた。なぜなら私はおそらく注意欠陥障害(ADD)で、興味をそそるやりがいのあることを好むからだ。そこで私は「やってみよう」と心に決めた。当時はファクシミリというものがあり、ロースクールへファクスで退学届を送信した。そして全てのクライアントに、今後は何らかの損害を負った不動産のみを扱う旨を通達した。その時はまさか自分がO・J・シンプソン、世界貿易センタービルとユナイテッド航空93便の墜落現場、ジョンベネ・ラムジーなどに関わるとは思いもしなかった。それらのいずれも予見できなかった。正直に言って、私が仕事の方向性を決めてから扱ったこれらの案件は全て、偶然の産物だった。

ー初めて扱った大きな案件を教えてください。

皮肉なことに、O・J・シンプソンだった。O・Jの物件を扱うまで私は無名の存在だった。でも偶然私は、ベル・エアにあるメネンデス兄弟の住宅を扱ったジョージ・ライヨンと、彼の妻ルース・ライヨンと知り合いだった。ルースはロサンゼルス・タイムズ紙の不動産欄に『ホットな不動産(Hot Properties)』というコラムを書いていた。彼らとは外でディナーを共にする仲で、ふたりともよく知っていた。ジョージにはメネンデス兄弟の案件について聞いていたが、ある時ルースから「あなた、O・Jの物件を扱うんですって?」と電話があった。その後彼女は、担当する新聞のコラムの1〜2行を使って私の仕事を紹介してくれた。私は彼女に大げさな話をした訳ではなかったが、それから状況は一変し、O・J・シンプソンの案件以降、私は決して振り返ることなく今に至っている。

ーO・J・シンプソンの案件に関わったきっかけは何ですか?

ニコール・ブラウン・シンプソンの父ルー・ブラウンは私の近所に住んでいて、何人か共通の友人がいた。そこで彼が、ニコール・ブラウンの家の査定を私に依頼してきた。ルーに話をする時は気を遣った。ルーは本当に良い人だったが、ニコールの家は有名なので価値も上がるものと思っていたのだ。私は彼とランチしながら慎重に話を切り出した。「物件が有名だからといって価値が上がるとは限らない。言いにくいが、良い知らせと悪い知らせがある」と彼に告げた。悪い知らせは、物件の価値が下がっていること。しかし時間をかければどうにか修復できるものだった。その後賃借人が見つかり、最終的には物件を売却できた。

Translated by Smokva Tokyo

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