凄惨な殺人事現場専門の不動産鑑定者が語る、難あり物件のあれこれ

ー可能な範囲で表現してくだされば結構です。

わかった。できるだけ忠実に表現してみよう。でも言っておくが私は異常な好奇心の持ち主ではない。私は死体や事件現場の写真を見たくはないし、興味もない。ヘヴンズ・ゲートの場合、私は死体が運び出されるのを外で待っていた。しかし終わって中へ入ると、悪臭が酷くて吐きそうになった。死体は3日前から放置され腐敗していたし、あちらこちらに血が飛び散っていた。カーペットや大理石の床から、家中全てだ。

ーなぜ血が? 彼らはフェノバルビタール(催眠・鎮静剤)を飲んだのではないでしょうか?

そうだ。体の組織が腐って3日間経ち、運び出す際に持ち上げて担架へ乗せる際、腐敗した組織が流れ出す。そういったものが家の中に残ったのだと思う。おぞましい光景だが、口や耳などあらゆる穴から血が流れ出し、臭いも酷かった。そこで我々はバイオハザード会社に依頼し、血の染み込んだ床などの表面、排出口、カーペットやカーテンなどを検査してもらった。生物学的に汚染されていれば、全てを除去する必要があったからだ。これは極端な例だが、ピープル誌の表紙にもなった2018年に扱った住宅は、窓に弾痕が見つかった。

ーどのような住宅ですか?

サン・ホアン・カピストラーノのある家族の息子が、居住している大学の街から車で家族の住む自宅を訪れ、両親と障害を持つ弟を銃撃した。家には多くの弾痕があり、搬送される際に落ちた血や大理石の破片も見られた。血液がカーペットの下の床にまで染み込んでいたため、床板を剥がす必要があった。損傷を受けた物件といえる。

ーそのような損傷を受けた物件の価値を上げ、修繕するために何ができますか?

まず私が学んだルールその1は、現実主義になれということ。価値を上げるのは難しい仕事だ。ネバーランド(マイケル・ジャクソンの自宅)をグレイスランド(エルビス・プレスリーの自宅)に変えようとしても、距離が離れすぎているために決してできない。何か手を考えるにしても一般的に言って、犯罪現場が博物館になったり観光名所に化けたりすることはないだろう。私が常に心がけているのは、損傷の程度を軽減すること。通常の状態にしたり元には戻せないと理解した上で、私は悪い状況からできる限りのことをしようと努力している。損失を最小限に抑えるのだ。我々は全てを、“コスト”、“用途”、“リスク”の3つのカテゴリーに分ける。“コスト”とは、血痕や弾痕等の清掃・修繕コストのこと。例えば悪魔崇拝者らが家に集まり、儀式のためにガレージの中で火を起こしたとする。それら全てがコストにつながるのだ。2つめの要素は“用途”。悪魔崇拝の儀式などは通常の用途とは言えない。そこで、用途によるロスを測るための方法がある。最後の“リスク”は、“いわくつき”と言い換えられる。つまり市場の一部には価値を落とさずに流通させることへの抵抗がある、ということだ。我々は全ての案件でこのようにカテゴリー分けして対策している。

ーいわくつきの物件を積極的に探し求める人々はいるでしょうか?


いる。ほとんど知られていないことだが、殺人や残忍な事件が起きると、正直言って私には理解できないが、悪魔崇拝の儀式をするため現場に侵入しようとする類の人々がいる。これは大きな問題だ。クライアントと警察にそのようなことがあると知らせると同時に、防ぐためのいくつかの対策もある。

ーどのような対策でしょうか?

スポットライト、セキュリティガード、ビデオだ。私の場合は、実用的かつ攻撃的なアプローチを取る。現場に侵入しようとする奴らはゴキブリのようなもの。闇に紛れて忍び込み、家主が照明をつけたりショットガンを浴びせたりする前に、さっと逃げていく。我々も被害に遭った経験があるので、私は懐中電灯と銃を手に屋内で待ち伏せている。奴らが押し入ってきても、すぐさま撃退できるのだ。

Translated by Smokva Tokyo

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