追悼キース・フリント:ザ・プロディジー絶頂期の秘蔵インタビュー「人生を楽しんで何が悪いんだ?」

1997年8月21日刊行、米ローリングストーン誌の第767号で表紙を飾ったザ・プロディジーのキース・フリント(Photo by Peter Robathan/Katz/Outline)

2019年3月4日、イングランドのエセックスにある自宅でみずから命を絶ったキース・フリント。その功績を振り返るため、彼が表紙を飾った米ローリングストーン誌1997年8月号のカバーストーリーを発掘。同年リリースの3rdアルバム『ザ・ファット・オブ・ザ・ランド』で絶頂期を迎えた、ザ・プロディジーの素顔に迫る13000字インタビューをお届けする。

キース・フリントは自らを「ねじ曲がった着火剤(firestarter)」と形容する。危険さを体現し、嫌悪感を煽るその男は、プロディジーのフロントマンではない(時は90年代、プロディジーはフロントマンを擁するタイプのグループではなかった)。しかし、過去6年に渡ってプロディジーのライブでオーディエンスの煽り役を担ってきた、しかめっ面のダンサーが初めて歌った(叫んだ、あるいは唸ったという表現の方が適切かもしれない)「ファイアスターター」の大ヒットにより、フリントはバンドの顔として認識されるようになった。鼻に突き刺したボルトは、左側の上唇に向かって傾いている。そして正面から見た場合のヘアスタイルを左から順に説明すると、緑(短い)、緑(角のように尖っている)、黒(短い)、金(短い)、黒(短い)、オレンジ(天に向かって垂直に伸びている)、金(短い)ということになる。ステージ上であれ、朝食の場であれ、近所のスーパーに行く時であれ、キース・フリントが見た目を変えることはない。歌詞にもあるように、彼はパンクの扇動者なのだ。

しかし今日、ドイツでのロックフェスティバルへの出演を終え、ミュンヘンからロンドンに向かうAir UKの午前便の通路側席に座っているフリントは、大人しく放心気味であり、見るからに不機嫌だ。メンバーのリアム・ハウレット(ソングライターでありバンドのブレーン)、リーロイ・ソーンヒル(絵に描いたような長身のダンサー)、マキシム(本名キース・”キーティ”・パーマー、曲によってMCとヴォーカルを担当)の誰ひとりとしてはしゃぐ様子はなく、売れっ子バンドらしい破天荒ぶりはまるで見られない。

しかし、大人しくなったところで問題は解決しなかった。小さな声でやりとりしていたフリントと客室乗務員の間には、明らかに険悪なムードが漂っていた。フリントのすぐ前に座っていた筆者は2人の会話の内容を聞き取れなかったが、その乗務員は毅然とした態度で、キース・フリントに旅客機から降りるよう告げた。ある別の乗客がフリントに代わって抗議したが、その乗務員は譲ろうとしない。問題視されたのは彼の振る舞いではなく、その個性的な見た目だったのかもしれない。「世の中には黄色い髪に我慢できないやつがいるんだよ」マキシムはそう話す。

武装した2名のドイツ人警察官によって、フリントは機内の外に連れ出されていった。こうして彼は当日、我々と行動を別にすることになった。

Translated by Masaaki Yoshida

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