追悼キース・フリント:ザ・プロディジー絶頂期の秘蔵インタビュー「人生を楽しんで何が悪いんだ?」

フリントが搭乗拒否されたことに対して憤りを覚えた我々は、その客室乗務員に敵意の眼差しを向けた。

「あのくそジジイ」ソーンヒルはそう呟いた。「やつに応対されるのはごめんだ」メンバーたちは辛抱強く口を閉ざしていたが、マキシムはその乗務員に丁寧な口調で名前を訪ねた。それが原因かどうかは定かでないが、飛行機がロンドンに到着して他の乗客たちが降りていく中、我々は機内で待機するよう命じられた。すると機関銃を手にした2人の武装警察官が現れ、我々に着席するよう命じると、彼らはまるで子供を相手にするような態度で説教を始めた。「あいつら何様のつもりだ」ソーンヒルはそう呟き、我々はようやく解放された。

2日後、筆者が訪れたフリントの自宅はこぢんまりとしていてカラフルだった(ハウレットの自宅では2メートル近い剣が壁に飾られており、その近くに置いてあった等身大の傾いた棺桶は金属製の根によって持ち上げられていた。「『ポルターガイスト』の終盤でさ、棺桶が地中から出てくるシーンがあるだろ?」そう言ってハウレットが蓋を開けると、そこには彼が好むアルコール類が並んでおり、どこか不吉なムードを漂わせていた)。

筆者が訪ねた時にフリントは留守にしていたが、彼の母親が家の整理をしにやって来ていた。彼女はコーヒーをいれてくれ、息子について語り始めた(彼女は「キースはプリンのように柔らかい」と話す)。ほどなくして帰宅したフリントは紅茶をいれ、自身について語り始めた。「俺には統合失調症の傾向があるんだ」彼はそう話す。「すごく温厚で穏やかかと思えば、周囲の人間が目を剥くような行動に出たりする。そういう時の俺は酷いもんさ、信じられないくらいにな。そっちに砂糖はあるか?」

話題は先日の搭乗拒否の一件に移った。その経緯について、フリントはこう説明する。「やつは俺の肩に手を置いてこう言ったんだ『お客様、お気分でも悪いのですか? お客様はいささか落ち着きがございませんので、当機にはご搭乗いただけないかもしれません』」その乗務員が再び通りがかった時、フリントは思い切り睨みながら「ご気分はいかがですか?」と皮肉たっぷりに問いかけたという。するとその乗務員は腰をかがめてこう言った。「やはりお客様には落ち着きが足りないようですね」

「俺が楽しそうなのがそんなに気に食わないのか?」フリントはそう問いかけた。「人生を楽しんで何が悪いんだ?」

「そうではございません」乗務員はそう答えた。「私はお客様に落ち着いていただきたいだけです」

「ああそうかい」フリントは穏やかな口調でこう言い放った。「俺はあんたにくたばってほしいね」

「承知いたしました」そう言って場を離れた乗務員は、ほどなくして警察官を連れて戻ってきた。フリントは別室で事情聴取を受けた後、その警察官たちから写真撮影とサインをねだられたという。

キース・フリント
キース・フリント、1997年にイギリスで撮影。(Photo by Martyn Goodacre/Getty Images)

Translated by Masaaki Yoshida

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