追悼ルーク・ペリー『ビバリーヒルズ高校白書』92年の出演者インタビューを回想

ブレンダとディランは1991年5月に放送されたかの有名な「スプリング・ダンス・パーティー」のエピソードまでセックスを延期していた。「初めは少し慎重だった」とドハーティーは言った。「でもドラマのなかでセックスを黙認するようなことはしない、って制作側が受け合ってくれたの。私たちはある場面を視聴者のために表現するのであって、良し悪しの判断はするべきではないと思う。家族の絆を深めてくれることなんじゃないかしら? だってドラマの登場人物が処女を失うのを観た親は、子どもに『どう思う?』って訊きたいはずよ」。ディランとブレンダはホテルの一室で水平の状態で腕立て伏せをしていた、という提案に対する視聴者の激しい怒りは、制作側に路線変更を突きつけた。

「あまりに激しい抗議に本当に驚いた」とスター氏は言った。「視聴者が怒っていた一番の理由は、ブレンダが処女を失った後もハッピーだったからだ。だから、夏に予定していた最初のエピソードでは、ブレンダが妊娠の可能性に気づき、ディランと別れなければいけないというストーリーを書く必要があった。これは正直かなりキツかった。『ルーク・ペリーとセックスした女の子がそれが原因で別れるなんて、どうやったら納得のいくストーリーになるんだ?』って思った。でも、どちらかと言うとテレビネットワークや広告主に対する反応だったと思うんだ。それもテレビ業界の一部だから」。それ以来、ディランとブレンダのロマンスは二の次にされてしまった。それでもなお、ペリーはこのように言った。「2人は今でもセックスしてるさ。現実を見ないと。ただ、話題にしてないだけだ。だって高校で何かが起きたら、後戻りなんてできないから。後戻りなんて絶対無理だ」

やがてFOXテレビは、自分たちが何かしら特別なものを持っていることに気づいた。気づいたきっかけは「視聴率ではなく、騒動だった」とFOXテレビの幹部のひとりは言った。ショッピングモールでペリーがもみくちゃにされた春以来、FOXテレビネットワークの番組制作者たちはこの熱狂的な人気を活用する方法を模索した。夏が訪れると、番組制作者たちは果敢にも新しいエピソードを世に送り出し続け、新たに30話を発注した。前例のない注文(1時間ドラマの場合、1クールにつき22話が一般的)は良い結果をもたらした。ライバル社がビバヒルを再放送するなか、ビバヒルは情報調査会社ニールセン社のトップ20にランクインしたのだ。

夏に放送された新しいエピソードでも引き続きティーンの苦悩が描かれた。「スプリング・ダンス・パーティー」の一件のおかげで描写はより慎重になった。ジェニー・ガースはこのように表現した。「私はケリーが誰かとヤったり、万引きしたりしてほしかったけど、賛同してもらえなかった。もう一生悪いことなんてできないじゃない、って思ったわ。悪いことなんて誰もが経験するのにね」

「誰もが『もしみんなのお手本のブランドンがドラッグをしている場面を放送したら、視聴者はどんな風に受け止めるだろう?』みたいなことでナーバスになっていた」とスター氏は言った。

その結果、優等生ブランドンは2度にわたって精神安定剤を盛られることになった。2回目に投与された危険薬物は架空の「U4EA」(実在するドラッグを使用した場合、やってみたいと思う視聴者が出てくるのを恐れるあまり、プロデューサーは架空のドラッグを考案した)というもので、ブランドンのおっかないブロンドのガールフレンドのエミリーがソーダ水に入れた。『リーファー・マッドネス』にオマージュを捧げた描写では、U4EAを投与されたブランドンは「生きてるって実感できる最高の気分」になり「ねえ、舌についてるブツブツって何て言うの?」などのぶっ飛んだことを口走ったり、シャツのボタンを外して朦朧とする意識のなか、車のボンネットで関係を持とうとしたりした。不注意でドラッグを摂取したからといって恐ろしい報いが避けられるわけではない。翌日、ブランドンはひどい頭痛に悩まされ(いわゆる酸性ハングオーバー)、前夜の行動にひどく恥じる。やっとのことで見つけた車はボコボコにされている。ここでの教訓は以下の通りだ。ドラッグとおっかないブロンド娘のソーダ水には手を出さないこと。

Translated by Shoko Natori

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