売春の非犯罪化、2020年大統領選の焦点に

ハリス議員の方向転換は、セックスワーカーの権利問題が全国レベルで知名度を上げていることを如実に表している、と言うのは、ピッツバーグシティペーパー紙のセックスコラムニスト、ジェシー・セイジ氏。支援団体SWOPピッツバーグの主宰者で、風俗業界情報を発信するポッドキャストPeepshowで共同司会者も務めている。「風俗業界はハリス議員を信用していません。(非犯罪化に対する彼女の支持コメントで)彼女が何を言いたいのかもよくわかりません」とセイジ氏。「ですが、この問題に言及するのが政治的に有利だと彼女が判断したことは重要だと思います。世の中の風潮が変わりつつあるのです」こうした世論の変化は数字の上でもはっきり表れている。2016年にマリスト大学が行った世論調査によると、49%のアメリカ国民が売春の合法化に賛成と回答。さらに10人中6人は、売春で逮捕された人々の起訴には反対だと答えた。

こうした認知アップの推進力となったのは、Backpageなど性犯罪絡みのオンライン人身売買の対策法案SESTA/ FOSTAへのあおりだ。表向きは、女性たちが自らの意思に反して人身売買されるのを防ぐのが目的だが、セックスワーカーたちはみな、最終的に逆効果だったと主張している。「業界にかかわる大勢の女性が、街に出て仕事をしなくてはならなくなり、安全ではなくなりました」というのは、セシリア・ジェンティリ氏。元セックスワーカーで、現在はDecrimNY運営委員会で活動している。


バーニー・サンダース議員は売春の非犯罪化に中立の立場を表明し、カマラ・ハリス議員は支持に回った 写真提供:Pete Marovich/EPA-EFE/REX/Shutterstock, Elise Amendola/AP/REX/Shutterstock

法案は売春の闇化の背中を押したかもしれないが、セイジ氏はそれでも、セックスワーカーの権利問題を表舞台に引き上げるという想定外の効果があったと考えている。「FOSTA/ SESTA法案の影響で、これまでにないほどセックスワーカーたちは一致団結しています」と彼女は言う。「こうした団結がセックスワーカーに関する世論に変化をもたらし、セックスワーカーの権利をメインストリームに押し上げています。その結果、いまでは大手新聞も風俗業界に悪影響を及ぼす法体制を記事にするようになりましたし、セックスワーカーの寄稿記事も掲載されるようになりました。こうした流れをうけて、大統領選候補者らは選挙キャンペーンでセックスワーカーの問題に触れざるを得なくなるでしょう」

Translated by Akiko Kato

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