マイケル・ジャクソンを告発した2人と監督が語る、この映画を作った理由

最後にもうひとつ。「ウェイドは彼の執筆にあたって、記憶を再構築するのに母親の力を借りねばならず、母親にこうメールしている。『マイケルと過ごした時のことが思い出せないんだ。記憶を呼び覚ましてくれるかな?』 自分の母親に頼らなくてはいけないような人物の記憶を信じることなどできるだろうか?」

ロブソン:経験をさらけ出すのは大変な作業なんだ。第一に、僕は虐待に関する記憶を失ったことは一度もない。そうだろう? もしそうなら、誰かに聞くなんてこともできないだろう? 寝室の扉の向こうには僕とマイケルしかいなかった。詳しいこと、たとえば僕らが最初にアメリカに渡った当時の正確な日付とか、そういうことは母親に聞かなくちゃならなかった。僕は子供だったし、20年以上も前の記憶だからね。

あの発言を、短絡的に「マイケルと過ごした時の記憶が全くない」ととらえるのは間違いだ。これが彼らのやり方なんだよ。枝葉の部分を取り上げて、文脈をまるきり無視して、弁明や言いがかりに使うんだ。でも真実は、こういう些細なことの裏側にある。時間をかけてことの複雑さや心の葛藤を理解してくれれば……ジェイムズと僕がずっとマイケルをかばってきたのは、まさにこれに尽きる。愛と虐待が入り組んだ結果なんだよ。

今現在、映画を目にした人はごくわずかです。ですが、来週になれば、アメリカ中の人たちの目に届くことになりますが、どんな気分ですか?

セーフチャック:(目を丸くして)めちゃくちゃ怖いよ。ものすごくね――それが答えだ。心底震え上がっているよ。本当にしんどい。どう受け止めていいかわからない。みんなが見るんだろうね。まったく想像できないよ。すごく緊張して、身構えているところだ。

ロブソン:わくわくしている部分もあるんだ。ここから人間性のある会話が生まれて、虐待や、対処法や、会話の進め方について話が進めばいいな、とね。その一方で、自分の家族の安全が心配な部分もある。昨夜もまた脅迫状が届いたんだ。こういう経験には、こういうことがつきものだ。自分がやるべきことをやるという気持ちと、妻と子供を守らなくてはという気持ちを常に行ったり来たりしているんだ。最終的な答えはわからないけれどね。

他に何か付け加えたいことはありますか?

ロブソン:女の子の場合は4人に1人、男の子の場合は6人に1人が性的虐待を経験している。これをどうにかしなくては。これは現実に起きているんだ。これがこの映画のすべてだ。

Translated by Akiko Kato

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