ロブソン氏とセーフチャック氏は、今回のドキュメンタリー出演で一銭ももらっていない。カリフォルニア州が定める故人の遺産訴訟の時効期限が過ぎ、2人がそれぞれ起こした訴訟は現在上告手続きの真っ最中だ。
いずれにせよ、『Leaving Neverland』は死後もなお続くジャクソンの伝説といまだ増え続ける遺産にとっては直接的な脅威となる。フォーブス誌によれば、2009年以降のジャクソンの収益は21憶ドル(インフレ調整後の数字)。現在ラスベガスでは追悼公演が行われ、ブロードウェイではミュージカルが近日上演予定。ジャクソンの音楽はいまも次々リリースされている。
ロブソン氏とセーフチャック氏はあらかじめ批判は覚悟していたようだ。だが2人を驚かせたのは、サンダンスやその他の地域での観客から寄せられたエールだった。ジャクソンの元友人2人は、ジャクソンが遺した音楽の素晴らしい思い出を抹消しろと言っているわけではない。ただ、自分たちはまともに聴くことはできなくなってしまった。
ローリングストーン誌とのインタビューに答えたロブソン氏とセーフチャック氏は(リード監督のコメントもあり)、ネバーランドで過ごした幼少期のこと、それをドキュメンタリーで追体験するという予想外の経験を事細かに語ってくれた。
ーサンダンスで作品が初上映されたとき、観客席やステージ上での心境を教えてください。ウェイド・ロブソン:上映されるまでにいろんなことを経験したよ……世間や、エステート、そしてジャクソン家(からの批判的な態度)と、いろんなことを経験した。ステージに向かうる途中、大勢の人がスタンディングオベーションしているのを見たときは本当に胸がいっぱいだった。僕は泣き出してしまって、でもなぜ泣いているのかわからなかった。後で振り返っていて、今まで本当のことを言っても誰にも応援してもらえなかったからだと気がついた。(いまも)毎日思いがけないタイミングで、癒しの瞬間が訪れるんだ。
マイケル・ジャクソンとジェイムズ・セーフチャック(1988)(Dan Reed/HBO)―最初に映画を見たときはどう感じましたか?ジェイムズ・セーフチャック:自分が映画に出ているっていうのは不思議だね。劇場に座って自分の姿を見るのは、どうも落ち着かないというか。自分としては、マイケルについての映画にはしたくなかった。彼の名声を利用した世間を騒がすような映画にはしたくなかったし、そういう映画とはかかわりあいたくなかった。僕が望んだのは、性的虐待の被害者の体験談を語る映画に参加すること。まさにそういうものになったね。
ロブソン:すごく非現実的な感じだった。劇場で目にする映画が……自分の人生のことなんだから。自分が今まで知らなかったホームビデオの映像を見ている感じだよ。僕はものすごく感情をゆすぶられた。すごく不思議な気分だった。最初の上映中、(席を)立たないでいるのが大変だった。ずっと距離を置きながら見ていたんだけど、核心の部分、虐待の話題になった時にはっと我に返って「おい、ちょっと待て、そうだこれは自分の映画だ」って思い出したんだ。