大麻に含まれる成分つくりだす酵母を科学者らが開発

科学者たちは酵母に新たな能力を授けた。(Photo by Per Bengtsson/Shutterstock)

ネイチャー誌に最近発表された論文によると、科学者たちは遺伝子操作によって、カンナビノイド成分を生成する酵母菌を開発した。

つまりこの酵母菌から非精神活性成分CBD(カンナビジオール)を生成することができるのだ。CBDは、不安症から足の痛みなど様々な病気の治療に有効だといわれている成分。同様に、マリファナの特徴である向精神作用をもたらすTHC(テトラヒドロカンナビノール)の生成も可能となる。

仕組みはビールの醸造過程とほぼ同じだが、この酵母はアルコールの代わりにマリファナに含まれる化学成分を作り出す。

研究者たちはマリファナの苗木からカンナビノイドの生成に必要な複数の遺伝子を特定し、これらを酵母のDNAに移植。移植された遺伝子から作られた酵素が化学反応を引き起こし、糖質をカンナビゲロール酸に変え、そこからTHCやCBD、その他のカンナビノイド化合物が生成される。

一見非常に複雑に見えるが、この方法を用いた製薬方法は既に前例がある。論文の共同執筆者で、カリフォルニア大学バークレー校で化学と生物分子工学を教えるジェイ・キースリング教授は、以前にも酵母を使って抗マラリア薬アルテミシニンを開発した。この薬は既に、比較的安価で市場に出回っている。

「製薬会社の中には、試験管の中の化学合成物でカンナビノイドを生成しているところもあります」と、キースリング教授はローリングストーン誌に語った。このプロセスだとお金も手間もかかるため、温室の中でマリファナを栽培し、苗木からカンナビノイドを抽出するやり方とそう変わらない。「発酵による方法の費用をきいたら、びっくりすると思いますよ」と教授。苗木からカンナビノイドを抽出する場合、苗木のごく一部しか使われないため、エネルギー効率という点でも不都合だが、一方で「酵母を使った場合も無駄は出ますが、その量は微々たるものです」とキースリング教授は言う。

キースリング教授と彼の研究チームは、今回の研究により、マリファナ産業の主な関係者がより安価で、より効率的にCBDを生成する役に立てれば、と期待を寄せている。CBD製品に対する需要が急速に高まっていることを考えれば(2022年までに200億ドル規模の市場になるという見方もある)、マリファナ産業全体をゆるがす大事件になるかもしれない。

「現状では、CBDを入手する際の課題のひとつは、どういった種類の大麻なのか、どのぐらいの純度なのかを知る術がないことです」と教授。だが、この方法を使えば「カンに頼る必要はなくなります」と語った。

Translated by Akiko Kato

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