リトル・シムズが語るUKラップのリアリティ「自分を女性ラッパーとは思っていない」

ーラッパーを志すにあたって、周囲にはどんな仲間がいたんですか?

私は15〜21歳くらいまで、スペース・エイジというクルーの一員として活動してきたの。そこには友達と一緒にやるからこそのエネルギーがあったし、お互いにインスピレーションを与えたり、チームとしていろんな形で助け合ってきた。ビデオもたくさん作ったし、ライヴだって何度もやった。そういう環境があったのは、自分にとっての財産になっていると思う。

ーそのくらいの時期から、ロンドンではグライムの人気がどんどん高まっていった印象です。

私もすごく影響を受けている。100%グライム育ちと言ってもいいくらい。自分のフロウにもグライムの要素が入っているし、ビートに対するアプローチも通じるものがあると思う。ただ、楽器の使い方や音楽性はまた別で。自分自身をグライムのアーティストだと認識もしていない。グライムのフィーリングを楽しみつつ、他のジャンルも自由に取り入れている感じね。



ー最初のミックステープ『STRATOSPHERE』を出したのが2010年、まだ15歳くらいの話ですよね。自分の作品を出そうと思ったきっかけは?

曲はたくさん書いていたから、バラバラに発表するだけではなく、ひとつの作品として聴けるものを作りたかった。当時はミックステープを作ることが重要で、自分がラッパーとして世に出ていこうと思ったら、(名刺代わりになる)ミックステープが必要だったの。だから、自分なりに音源の作り方を勉強して、そこからEPも制作するようになったわ。

ーこれまで多くのEPを発表していますが、当時と今とで制作のアプローチは変わったりしましたか?

そんなに変わってないかな。もちろん、自分が年齢を重ねて成長してきたのと同じように、音楽性やラップしている内容は変わってきたとは思う。昔から一貫しているのは、何か新しいものを制作するときは、失敗を恐れずにチャレンジすること。スタジオは安全な場所だと自分に言い聞かせて、オープンかつ誠実に取り組むようにしている。




リトル・シムズが出演した「BACARDi“Over The Border”2018」にて。Photo by Hana Yamamoto

ー音楽性でいうと、どんなアーティストに影響されてきたと思います?


とにかく大きかったのはローリン・ヒル。あとはジェイ・Z、ビギー・スモールズ(ノトーリアス・B.I.G.)、モス・デフやカニエ・ウェスト。いわゆるレジェンドばかりね。

ーローリン・ヒルといえば、アメリカ公演のサポートを務めたそうですね。

狂ってたわ(笑)。シュールな経験だった。何年も前から私にとってのアイドルだから、あのときの感動は言葉では説明できない。あれほどの大物が日々どんなことをやっているのか、間近で見ることができたのも大きかったわね。本当にラッキーだったし、ツアー中は学生に戻ったような感じだった。

ー実際にアメリカに行ってみて、向こうとUKでヒップホップのカルチャーに違いは感じましたか?

特に感じなかったかな。それはたぶん、アメリカの音楽を聴いて育ってきたからだと思う。むしろ、アメリカのシーンも私を受け入れてくれたし、「来るべきところに来た」って感じだった。

ーなるほど。

そういうふうに思えたのも、ここ4年くらいずっとアメリカとロンドンを行き来しながら、強固なファンベースを築くことができたからだと思う。あとは私の作ってる音楽が、アメリカに住むリスナーにとっても共感できる内容なんだと思う。グライムだけではない、もっとオーセンティックな音楽を作っているから受け入れられたのかな。

Translated by Kazumi Someya

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