2度の助演男優賞受賞、マハーシャラ・アリという生き方

アリは壮大な景色を見ながら展望台を歩いていた。私達の周りにいた数十の観光客もぶらぶらと歩きながら、下に見える街や、『理由なき反抗』やもっと最近では『ラ・ラ・ランド』のような映画によって有名になった、このアール・デコ様式の建造物である天文台そのものの写真を取っていた。

オスカー史上最悪の混乱を招くこととなった、作品賞を受賞したと思いきやすぐに『ムーンライト』にその座を奪われた『ラ・ラ・ランド』を覚えているだろうか。自然とこの質問が浮かぶ。マハーシャラ・アリは炎上を狙ってわざわざここに来たのか、と。

もちろんアリはそんなことをするような人ではない。本当のところはここは彼が以前取り付かれたかのようによくサイクリングに来ていた場所なのだ。だからこのグリフィス公園に来たのだ。そして、またサイクリングを再開しようとも考えているようである。「依存症かってぐらいに来ていたけど忙しくなってリズムが崩れてしまって。でも今日ここに来る時に『よし、自転車で行こう』って思ったんだ。」とアリは言った。

だからといってここに来たらサイクリングウェアに身を包んだマハーシャラ・アリを見られると思わない方がいい。「サイクリングウェアは好きじゃないんだ。休憩してコーヒーを飲みたくなったらどうするんだい? ウェアのままカプチーノを頼む? ありえないね。俺はクールにいきたいんだよ」とのことだ。彼は白いTシャツにカットオフのリーヴァイスでサイクリングするのがお好みのようだ。

アリの正式なファーストネームはMahershalalhashbazという。ヘブライ語の聖書にある天啓で、大まかに訳すと「急いで物にしろ」といった意味になる。

サンプル
父フィリップ・ギルモアとアリ。1978年頃。ハーシャルと呼ばれていた彼が3歳の時、ギルモアはカリフォルニアに家族をおいてプロのダンサーになるためにニューヨークに移り住んだ。「今はそれが完全に理解できるんだ。少しも怒りの感情はないし、父が自分の道を貫いたことでより多くを教えてもらうことができたと感じている」とアリは恨む気持ちは全くないという。Photograph courtesy of Mahershala Ali

アリは急いで物にすることはなかった。物にするのに40年かかった。

Translated by Takayuki Matsumoto

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