米国防総省のクラウド契約を巡る、トランプとベゾスの億万長者対決

ベゾスは、CIAと国防総省のどちらにもコントラクターとして太いパイプを持つと思われる。さらに、自分の演壇として利用するためにワシントン・ポスト紙を買収したのだろう。一方で(特に)自身の行政機関による捜査の手を払い除けているトランプの味方は、何人かの上院議員やFOXニュース、自身のTwitterアカウントだ。最終的にベゾスは、おそらくより組織的な力を振るうかもしれない。

JEDI契約をものにできればAmazonは、ペンタゴンの寄せ集めのコンピュータシステムの標準化を一手に担うはずだった。しかし合衆国連邦請求裁判所の裁判官エリック・ブラッギンクは、判断を延期した。

きっかけは、入札のライバル候補のひとつであるOracleが起こした訴訟だった。同社の共同CEOであるサフラ・キャッツは、シリコンバレーにおける最大のトランプ支持者のひとりだとされている。同訴訟は、ペンタゴンで調達担当を務めるディープ・ウブヒによるJEDIの交渉への関与が、紛争の要因になっていることを示している。Amazonの元社員だったウブヒは2017年、「一度アマゾニアンになったものは、永遠にアマゾニアンだ」とツイートしている。

Oracleはさらに、JEDI契約は米国防権限法2008に抵触すると主張した。同法は、いわゆる“数量未確定(IDIQ)”契約を規制するものだった。

コントラクターが“必要都度”サービスを提供するため、常に待機状態にあるような、政府との契約が存在する。同様の契約は、1994年に連邦調達合理化推進法(FASA)が成立し、IDIQ契約を獲得した企業に対するライバル企業による不服申立を制限するようになって以降、盛んに結ばれるようになった。

Acquisition Advisory Panelによるその後のレポートによると、FASAが成立して1年以内に、米国政府は製品よりもサービスにより予算を割くようになったという。さらに9.11後、同様の契約がさらに増加した。米国防総省だけを見ても、2005年のサービス契約の総額は1410億ドル(約15兆6200億円)で、1999年と比較して75%上昇している。

最も悪名高いIDIQ契約は、イラクにおけるハリバートンの関連会社との契約だろう。2006年、イラク復興事業から“得た教訓”に関するヒアリングでカール・レヴィン議員(ミシガン州、民主党)は、ハリバートンとの契約でIDIQ契約に内在する問題点が明らかになったと証言した。

「政府が何かをしようと決めた時に競争入札が存在しないために、IDIQ契約は悪用されやすい。つまり、コントラクターがどのような見積りを出してこようが、政府は受け入れざるを得ないのだ」とレヴィン議員は指摘した。もしもAmazonがJEDI契約を勝ち取った場合、本質的にクラウド版ハリバートンになっただろう。イラクでトイレに行くとハリバートンの元子会社KBRの名前を必ず目にしたのと同様、ペンタゴンと関連セキュリティサービスのデジタル部門の至る所にAmazonが出没する可能性があり、同社はエンドレスなサービス提供を見込めたはずだった。

JEDI契約に関しては、Amazon寄りに不正が働いている、との非難の声が常に上がっていた。下院議員のスティーヴ・ウーマック(アーカンソー州)とトム・コール(オクラホマ州)は、「国防総省は特定の企業のみが契約できるような条件を掲げている」と非難した。

両議員によると、同契約には米国防情報システム局の定めるインパクトレベル6が要求され、それはAmazonのみが満たすことのできるクラウドセキュリティの最高レベルだという。

Translated by Smokva Tokyo

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