Spotifyの経営内部に切り込んだ、『解体新書』の著者が明かすストリーミング企業の裏側

Spotifyのロゴが映るスマートフォンの画面 (Photo by Alexander Pohl/NurPhoto via Getty Images)

Spotifyはこの本を出版してほしくなかった? 話題の新著『Spotify Teardown』(=Spotify解体新書)を上梓した研究者が明かす、大手ストリーミング企業に隠された真実

みなさんは、スウェーデンの音楽会社Spotifyについてどのぐらいご存知だろうか? 過去数年にわたって世界的プラットフォームの内幕を調査した5人の研究者は、同社はスウェーデン企業とはいえず、真の意味で音楽関連企業でもないと言うだろう。彼らが導き出した結論は、Spotifyは様々に姿を変えるIT企業であり、レコード会社への戒めであると同時に救世主。マスメディアとしての一面も併せ持ち、FacebookやTwitterと同様、公的機関の調査を受けてしかるべき存在だ。

今週、マサチューセッツ工科大学出版局より『Spotify Teardown』が出版された。副題は「音楽ストリーミングの隠されたブラックボックス(Inside the Black Box of Streaming Music)」(Amazonでも発売中)。本の著者であるスウェーデンの社会科学研究チーム――マリア・エリクソン、アナ・ヨハンソン、ラスムス・フライシャー、ペレ・スニカーズ、パトリック・フォンデラウー――は取材を重ね、データを解析して、同社の実態をつぶさに検証した。とくに話題となったのが、チームが「バックエンド調査」と呼ぶ調査。架空のレーベルを立ち上げて、Spotifyの金融取引の裏側を垣間見ようと試みたのだ。このような手法ゆえに、Spotifyからチームの研究費差し止めを脅されるハメになったが、それと同時にこの本は、テクノロジー企業を監査する正義と目的を考えさせるきっかけともなった。

メディアの崩壊とアルゴリズム文化に関する綿密な洞察力と、音楽史のファンにはたまらないトリビアが満載のこの本は(Spotifyがスウェーデンの最先端技術の象徴としてあまりにも持て囃されているので、同国の首相はスウェーデンのプレイリストをプリインストールしたプレミアム会員のアカウントを海外要人にプレゼントした)、企業としてのSpotifyの歴史をひも解くとともに、音楽の未来について読者に問いを投げかける。著者の2人エリクソン氏とスニカーズ氏がローリングストーン誌との取材に応じ、調査結果をかいつまんで話してくれた。



─Spotifyにおとり捜査を仕掛けるというアイディアは、どんな経緯で生まれたんですか?

スニカーズ:あれは2013年、Spotifyとのインタビューをしていた時でした。Spotifyの本部がストックホルムにあって、ちょうど僕たちが仕事場にしていたスウェーデン国立図書館の近くだったんです。彼らは会社の成り立ちだとか、ファイル共有や著作権侵害対策についてかなりオープンに話してくれました。ですが、データ交換の話になると、かたくなに口を閉ざしたんです。スウェーデン・リサーチ・カウンシルから助成金が出たのですが、そこで問題となったのが「この巨大な新興企業から、どうやって情報を引き出せばいいのか?」ということでした。彼らはデータにアクセスさせてくれない。ですから僕たちの研究は、ジャーナリストがFacebookやTwitterを嗅ぎ回るのに似たような形となりました。つまり、データにアクセスできない場合、大手新興企業を調べ上げるにはどうすればいいだろうか?と考えたんです。

Translated by Akiko Kato

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