2019年アカデミー賞総括:司会者不在によりスピーチで訴えた授賞式

最優秀作品賞を受賞した『グリーンブック』の面々(Photo by Kevin Winter/Getty Images)


『グリーンブック』が最優秀作品賞として発表されたあと、映画製作者のピーター・ファレリーは人種間関係に関する同作品のコメンタリーについて話した。そして「この作品のストーリーは最初から最後まで愛情についてだ。どんな違いがあっても互いに愛し合うこと、そして自分が何者かという真実を見つけ出すこと。私たちは同じ人間なのだから」と述べた。喜びのあまりサミュエル・L・ジャクソンにしがみついたあとで、スパイク・リーは最優秀脚本賞の受賞コメントの制限時間いっぱいで、人々に一致団結を求め、2020年の大統領選挙に備えて「正しい歴史を築こう」と叫んだ。そして「正しいことをしよう」と結び、笑いながら「このセリフは外せないって、みんな知ってるよね」と付け加えた。



”声なき者に声を与える”のがこの夜の発言の根底に流れていたテーマだったが、ハーヴェイ・ワインスタインのスキャンダルの副産物で溢れかえっていた昨年の授賞式とは異なる影が今回の授賞式には生まれた。特に目立ったのがABC放送のレッドカーペット・リポーターたちで、彼らは女優たちに「どこのドレスですか?」とまた質問するようになったのである(去年はTime’s Up運動のおかげでこの質問をすると周囲のひんしゅくを買っていた)。また、『ボヘミアン・ラプソディ』は複数の賞を受賞したにもかかわらず、公開後に過去の性的違法行為で告発された監督ブライアン・シンガーの名前は一度も発せられなかった。

さらに、今回まったく触れられなかったアカデミー賞の構造的転換の一つが、動画配信サービスNetflixのハリウッドでの存在感が大きくなった事実である。『ROMA/ローマ』の成功がNetflixのパワー拡大の証しであり、もう一つの受賞作品である『Period. End of Sentence(原題)』も同様にNetflixによって制作されたものだ。この現実を目の当たりにした既存の映画スタジオの重役たちは、今頃ガタガタ震えていることだろう。

とにかく、毎年恒例の見ている方が恥ずかしくなるような司会者のお寒いギャグで飾られた授賞式ではなかったと言え、今回の授賞式は現在進行中のハリウッドの変化を証明するものとなった。最優秀監督賞の受賞スピーチでキュアロンが強調したことがそれをよく物語っているだろう。メキシコ原住民の女性の視点で描いた映画をアカデミーが認めてくれたことに感謝したあと、彼は映画の力についてこう語った。「アーティストとしての我々の仕事は他の人が見ない場所を見ることだ。物事から目を背けることが推奨される時代には、この仕事の責任がもっともっと重くなってくる」と。

Translated by Miki Nakayama

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