2019年アカデミー賞総括:司会者不在によりスピーチで訴えた授賞式

最優秀作品賞を受賞した『グリーンブック』の面々(Photo by Kevin Winter/Getty Images)


授賞式を後ろで操る首謀者がいないため、感動的な場面の感動がさらに強調された瞬間もあった。今年は宮廷の道化師とも言える、米人気司会者のジミー・キンメルもおらず、12月の同性愛差別ツイートが物議を醸して土壇場での降板となったケヴィン・ハートの代役もいなかったことが奏功し、多くの受賞者たちの口から現在の社会問題に関するコメントが発せられた上に、プレゼンターの中にも社会問題を取り上げる者がいた。シェフのホセ・アンドレは、『ROMA/ローマ』が作品賞にノミネートされたとき、「私たちの生活の中にいる見えない人々」、つまり移民と女性を深く認識したと言う。

今年の受賞者の多くは有色人種だ。『ボヘミアン・ラプソディ』でフレディ・マーキュリーを演じて最優秀男優賞を受賞したラミ・マレックは、自分がエジプト移民の息子であると観客に向かって胸を張って述べ、この作品の中にマーキュリーのみならず彼自身の生い立ちも反映されていると語った。「自分のアイデンティティーに葛藤し、自分の声を見つけ出そうと必死な人々に言いたい。僕たちが作ったこの映画は、誰はばかることなく徹頭徹尾自分らしく生きた移民のゲイ男性の話だ。そして、今夜、ここでみんなと一緒に彼の人生と彼の物語を祝っているということは、このような物語を僕たち全員が求めているという証しだ」と(彼が退場するときのBGMが『ウエストサイド物語』の「アメリカ」だったのが奇妙ではあるが)。



これ以外で目立ったのが、最優秀長編ドキュメンタリー賞を受賞した『Free Solo(原題)』を製作したアジア系アメリカン人映画製作者の一人エリザベス・チャイ・バサヒリィが、女性と有色人種を雇い入れることを称賛した瞬間だろう。外国語映画作品を紹介した俳優ハビエル・バルデムは(スペイン語の字幕付きで)「創造力と才能の自由を奪う国境も壁も一切ない」と述べた。そして、この部門の受賞者でメキシコ人監督のキュアロンは、子供の頃に『市民ケーン』や『ジョーズ』『ゴッド・ファーザー』などのアメリカ映画を見て育ったと冗談を飛ばした。『ブラックパンサー』の衣装デザイナーであるルス・E・カーターは最優秀衣装デザイン賞を受賞した初のアフリカ系アメリカ人女性の一人で「アフリカ人の気品が高く評価されること、そして女性がスクリーン上で主導権を握る力を得たことが誇らしい」と述べた。そして、『スパイダーマン:スパイダーバース』の制作チームは、白人以外の映画好きが「彼は自分に似ている」や「彼らも僕らと同じスペイン語を話している」と言える映画を作ったと自負していると語った。

最優秀短編アニメーション賞を受賞した『Bao』の中国系カナダ人監督ドミー・シーは、自分の憧れの人の後に続くようにと言って若い女性を励ました。「スケッチブックの影に隠れているオタク気質の女の子たちに言いたいわ。みんな、怖がらないで、自分のストーリーを世界に教えてあげましょう」と。また、最優秀短編ドキュメンタリー賞を受賞した『Period. End of Sentence(原題)』は女性の月経を不浄と見なすインドの風習を描いているのだが、監督ライカ・ゼタブチはこの作品で女性に力を与えたかったと言った。そして受賞スピーチでは「私が今泣いているのは生理中だからじゃないの。月経がテーマのドキュメンタリー映画がオスカーを取ったなんて信じられないからよ」と語った。

Translated by Miki Nakayama

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