フーリガンから建築まで、写真集『モスクワ』が捉えたアンダーグラウントの光と闇

写真集『モスクワ』より(ブギー著、powerHouse Books出版)

スラブ語圏の都市の光と闇を捉えた、セルビア人の写真家ブギーによる生々しくリアルな写真集『モスクワ』が発表された。これらの作品を通じて、彼が表現したかったものとは。

20年以上、ブギーはニューヨーク、イスタンブール、東京といった大都市の裏通りをさまよいながら、写真家としてのキャリアを積み上げていった。人ごみの中へ入っていっては、時に生々しい、時に心かき乱すような画を探し出す。カメラに映るのが人物だろうと建物だろうと、彼はつねに、被写体の飾らない、内なる姿を見せてくれる。

新作写真集『モスクワ』のために、ブギー――1969年、セルビアのベオグラード生まれ、本名はウラジミール・ミリヴォイェヴィッチ――が初めてロシアの首都を訪れたのは2015年。初めて足を踏み入れたにもかかわらず、そこに住む人々に通じるものを感じた。「俺はセルビア人だからね」ブルックリンの自宅以外に生活の拠点としているベオグラードから、彼はローリングストーン誌との取材に応じてくれた。「ロシア人は俺たちのことを気に入ってるんだじゃないかな。ロシア人ていうのは、初めて会ったときは冷淡なんだ。相手のことがわかるまではね。ひとたび打ち解けると、世界で最高の人たちさ。なんでもしてくれるよ」

3回の撮影旅行はいずれも10~12日間にわたった。写真家はソーシャルメディア上で知り合った人々とのコネクションをフルに活用し――大半がサッカーのフーリガンや、地元のボクサーだった――、モスクワの光と闇を映し出すアンダーグラウンドの世界を発見した。「よくありがちな観光スポットは眼中にないんだ」と彼は言う。「俺が求めるのはアンダーグラウンドの世界。社会の周辺なんだ」

ひとつ、この写真集に欠けているのが写真家によるコメントやキャプション――彼はむしろ、写真そのものに語らせようとしている。「観客に影響を与えようなんて思ったことは一度もない」と本人。「見る人に、好きなように解釈させている。俺はただ、自分が見た世界をそのまま伝えているだけさ」

そうしたスタンスにも関わらず、ブギーはローリングストーン誌のために特別に写真集からいくつか作品を抜粋し、それらを眺めながら、ロシアの首都に暮らす人々――とくに建築物――への熱い思いを語ってくれた。

#1
「スパルタのフーリガン」

写真集『モスクワ』より(ブギー著、powerHouse Books出版)

この写真は、モスクワの二大サッカーチーム、FCスパルタクとCSKAモスクワの試合で撮ったもの。「モスクワ最大のライバル同士なんだ」とブギー。「両チームのファンやフーリガンは互いに憎みあってるのさ。ここに写っているのはスパルタクのフーリガンの1人だ」


#2
「胸にタトゥーをした男」

写真集『モスクワ』より(ブギー著、powerHouse Books出版)

「これはモスクワを最初に訪れたときだね」とブギー。「(彼に)会ったときはシャツを着てて、ちらっとタトゥーが見えたんだ。近づいていったらシャツを脱いでくれて、刑務所時代に入れたタトゥーを見せてくれた。俺の記憶だと、たしか彼は30年ムショ暮らししてたはず。だけど鵜呑みにしないでくれ――記憶ってのは怪しいもんだから」

Translated by Akiko Kato

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