Koie(Crossfaith)が語るBMTH「自分達のメッセージは変えずに自然と成長している」

ーロックがクリーンになり過ぎてしまったのは何故だと考えられてます?

日本って、全体としてはそこまで貧しい国ではないじゃないですか。で、音楽っていうのは「ちゃんとした生活」があってこそ成り立つものやと思うんですね。だけど、その生活の部分だけで満たされてしまっている人達が多い国なんやと思うし、だからただクリーンなだけのものが好まれやすいのかなって。

ーCrossfaithで言うと、直近のシングルや『EX-MACHINA』で2020年の東京、近未来をテーマにして、よりハイパーな音像と人間の凶暴性を融合させる音楽へと向かったと感じていて。そういう視野を持ったKoieさんからすると、汚いものや歪なものが廃絶されて単にクリーンなだけの世界になっていく向きにはどういう気持ちがあるんですか。

ああー、そうですねえ。でも、綺麗にならされていくものが多くなるからこそ反発しようとする動きも強まっていくと思っていて。そういう意味では、より一層二極化していくと思うんですよ。規制と抑制は音楽に限らずいろんなところで既に進んでいるじゃないですか。たとえばYouTubeで言っても、何かの陰謀論を扱った動画が「おすすめ」の欄に上がってこないようにされているとか。でも、表向き綺麗な世界にしようとしたって、結局は人の心が崩壊して、一気に爆発するタイミングはどこかで必ず来るんちゃうかなと個人的には思ってます。

ーKoieさんが最初にヘヴィな音楽に惹かれたきっかけも、何かしらに心が縛られていると感じたり、外的な何かへの反発だったりしたんですか。

そうやと思いますね。どうしても自分自身に満足できてなくて、コンプレックスも強かったんです。それが中学2年生くらいの時で、スリップノットの『アイオワ』を聴いたのが最初やったんですよ。「People=Shit」って歌ってるヤバいヤツおるぞ!って思って(笑)。

ーこんなこと言ってもいいんだ?っていう。

そうそう。「俺はこんなはずじゃないねん」っていう自分の気持ちがあった時に、激しい音楽で好き放題ボロクソ言ってるヤツがむちゃくちゃカッコよく見えた。そういうニヒリズムを強烈に持ってたし、心が落ち着いている時には、なかなか激しい音楽は聴かないじゃないですか。だから、激しい音楽に心惹かれたのも当時の自分がかなりイラついてたってことやと思うんですね。中学生の時はイジめられたこともあって、俺は今でもヤンキーはファックやと思ってるんですけど……あの当時の激しくてラウドなロックは、俺にとって「頭の中であいつらを殺す方法」やったんです。

ーよくわかる表現です。

自分の唯一の味方が音楽やったんですよね。なんなら、同級生やったTeru(Program, Vision)に心配されましたもん。「こいちゃん、“People=Shit”なんてヤバいの聴いて大丈夫!?」って。なんなら、Teruは彼の親に相談したって言ってましたからね、「こいちゃんがヤバい音楽聴いてる!」って(笑)。

ーははははははは! 

(笑)やっぱり、その曲を聴いてる間だけは自分が最強やって思える感覚は、ロックでしか味わえないものなんですよ。そういう尖り方はいつまでもロックにあってほしいし、さっき言ったように人の心が軋んだり崩壊したりするタイミングがどこかで必ず来る。そういう時に必要とされるのが本当のロックやと思うんです。その役割は今ヒップホップが担っているのかもしれないですけどーーそれも、ロックがただ“みんなのもの”になってしまって、フェスを象徴に商業的なものになった結果やと思うんですよ。でもブリング・ミーの『amo|アモ』は、メインストリームでやっていけるだけのポテンシャルを持った楽曲と、今も変わらず根底に痛みがある歌の両面を持っているアルバムやと思うんです。ただ、この作品だけを切り取るというよりも、ブリング・ミー・ザ・ホライズンっていうバンドの歴史自体がその相反する面を両立しようとしてきた道程やと思うんです。まあ、やっぱりどの音楽も「みんなのもの」になり過ぎた瞬間に、誰に伝えようとしているのかが薄まることは確実にあって。ロックは今そういう時期にあるのかなっていうのは思いますね。

ーそれに、「みんな」という言葉の意味するところが変化したのも大きいと思うんです。いろんなツールによってお互いに顔の見えないコミュニケーションが増えた今、「みんな」という概念がさらに漠然として巨大なものになり過ぎてしまった気がするんですね。その結果、音楽に限らず誰に何を伝えたいのかが薄まってしまうことが増えたり、ただマウントの取り合いにしかなっていなかったり。

自分が何を歌いたいのか以上に外的なことばかりに気を取られてしまいやすくなったと思うし、自分が伝えたいことを貫いた結果として、それが誰かの代弁になっていくものやと思うんですよ。で、イタくても心の内側の悲しみや苦しみを歌い続けてきたブリング・ミーは若者の代弁者になってきたわけで。その中で、ともに成長していける人が増えていくんですよね。それで言うと、Crossfaithの曲はブッ飛び過ぎていて感情移入しにくいんかな?っていう気がするんですよ(笑)。

ー失礼な言い方かもしれないですが、そういうシビアな自己認識があるのは結構意外でした。

ありますねえ。俺はやっぱり、俺みたいなヤツに対して歌っていたいんですよ。俺はこんなんちゃうねん!って思って悶々としているヤツが、その気持ちを超えていけるように歌いたい。だからこそ、俺個人もちょうど自分の歌の表現を模索してるのが今なんです。オリヴァーも最初はピッチスクリームだけやったのが、元々持っていた繊細な声を上手く活かしていて。それを聴いて、より一層自分の歌を見つめ直しましたね。たとえばバンド関係なく俺がソロで作品を作ったら、結構暗いラップばっかりになると思うんですよ。だけどCrossfaithっていうバンドがやるべきことはそこじゃないって思ってるし、そこで歌う人間としての歌を追求していきたい。だけどいつでも忘れていないのは、自分みたいなヤツに歌うからこそ説得力が生まれるってことで。自分みたいなヤツに向けて歌うからこそ人に響くんやって……俺は今も信じてるんです。




「ONE MAN TOUR 2019 – EX_MACHINA CLIMAX -」
3月17日(日) Zepp Osaka Bayside
3月19日(火)Zepp Nagoya
4月7日 (日)Zepp Fukuoka
4月12日(金)、13日(土)Zepp Tokyo
http://crossfaith.jp/top


New Album『amo|アモ』
ブリング・ミー・ザ・ホライズン
ソニーミュージック・インターナショナル
発売中

収録曲
01. i apologise if you feel something | アイ・アポロジャイズ・イフ・ユー・フィール・サムシング
02. MANTRA | マントラ
03. nihilist blues feat. Grimes | ニヒリスト・ブルース feat. グライムス04. in the dark | イン・ザ・ダーク
05. wonderful life feat. Dani Filth | ワンダフル・ライフ feat. ダニ・フィルス
06. ouch | アウチ
07. medicine | メディスン
08. sugar honey ice & tea | シュガー・ハニー・アイス&ティー
09. why you gotta kick me when i’m dow? | ホワイ・ユー・ガッタ・キック・ミー・ホエン・アイム・ダウン?
10. fresh bruises |フレッシュ・ブルーゼズ
11. mother tongue | マザー・タング
12. heavy metal feat. Rahzel | ヘヴィー・メタル feat. ラゼール
13. i don’t know what to say | アイ・ドント・ノウ・ホワット・トゥ・セイ

●アルバム購入リンク
https://SonyMusicJapan.lnk.to/BMTH_amo_jpRo

●海外オフィシャル・サイト:
http://www.bmthofficial.com

●日本オフィシャル・サイト: 
http://www.sonymusic.co.jp/artist/bringmethehorizon

Summer Sonic 2019
ブリング・ミー・ザ・ホライズン出演日程
8月16日(金)大阪
8月17日(土)東京
http://www.summersonic.com/2019/

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