2019年アカデミー賞予測、誰が取るのか?誰が取るべきなのか?

監督賞
アルフォンソ・キュアロン『ROMA/ ローマ』
ヨルゴス・ランティモス『女王陛下のお気に入り』
スパイク・リー『ブラック・クランズマン』
アダム・マッケイ『バイス』

パヴェウ・パヴリコフスキ『COLD WAR あの歌、2つの心』
2013年『イーダ』でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したポーランドの奇才、パヴリコフスキ監督をノミネートしたのは、『アリー/ スター誕生』のブラッドリー・クーパーを候補から外すための言い訳だ、と言う人もいる(『イーダ』が受賞した同じ年、アカデミーはベン・アフレックにも同じ仕打ちをした――それでも『アルゴ』は最終的に作品賞を獲得したが)。アカデミーは俳優兼監督が嫌いになったのだろうか? 映画監督組合賞では5人の候補者の中に、クーパーと一緒に『グリーン・ブック』のピーター・ファレリーの名前も挙がっていた。もっとも、おバカ映画『ジム・キャリーはMr.ダマー』で有名なファレリー監督は、堅物なアカデミーのお眼鏡にはかなわなかったのだろうが。女性挑戦者の姿も見当たらない。アカデミーの男性諸君、今年女性監督が選考基準をクリアできなかった理由を、どなたかご説明いただけないだろうか?

本命:アルフォンソ・キュアロン
向かうところ敵なし。

大穴:スパイク・リー
長いことおあずけを食わされた末、ようやく初ノミネート。監督賞部門ではめったに有色人種を受けつけないアカデミーの、精一杯の譲歩だろう。だが、オスカーの嫌われ者ライアン・クーグラーと比べればましなほうだ。数々の部門でノミネートされている『ブラックパンサー』には、監督などいませんでした、と言わんばかりの扱いだ。

脚本賞
『女王陛下のお気に入り』
『魂のゆくえ』
『グリーン・ブック』
『ROMA/ ローマ』
『バイス』

肝っ玉の小さいアカデミーが、『Sorry to Bother You(原題)』のブーツ・ライリーや『Eighth Grade(原題)』のボー・ボーナムを認めるわけがない。その点でアカデミーは予想を裏切らなかった。オリジナリティや若さや反骨精神に背を向け、馴染みのテンポに甘んじた。ノミネートされた『ROMA/ ローマ』でさえ、ストーリーに勢いがないと一蹴されるだろう。

本命:『女王陛下のお気に入り』
脚本家のデボラ・デイヴィスとトニー・マクナマラは、監督のヨルゴス・ランティモスの手を借りて、18世紀の宮廷茶番劇を、辛辣なユーモアを織り交ぜて、男性支配の世界でもがきながら頂点を目指す女性たちの物語へと作り替えた。そして現代の社会文化を見事にとらえた。

大穴:『魂のゆくえ』
この世界が完全無欠であったなら、『タクシードライバー』や『レイジング・ブル』、『ハードコア』、『ブルー・カラー/ 怒りのはみだし労働者ども』など、社会に立ち向かう野心的な脚本を書いたポール・シュナイダーの自宅の棚にはオスカー像がずらりと並んでいていいはずだ。信仰の危機を描いた『魂のゆくえ』の脚本は言わずもがな。にもかかわらず、72歳の語り部は50年にわたるキャリアで、今回ようやく初ノミネート。彼が受賞するべきなのはもちろんだが――アカデミー会員は、彼を胴上げして称えるべきだ。だが実際にはそんなことは起こるまい。たとえCMタイムの間でも。

脚色賞
『アリー/ スター誕生』
『バスターのバラード』
『ブラック・クランズマン』
『ビール・ストリートの恋人たち』
『ある女流作家の罪と罰』

アカデミーが女性の場所を用意してくれたのはうれしい限り。笑いと感動を呼ぶ『ある女流作家の罪と罰』の脚本には、監督のニコール・ホロフセナーも参加しているのだ。意外なところでは、ジョエル&イーサン・コーエン兄弟によるNetflix配信作品『バスターのバラード』もノミネートされたこと。もっとも、この兄弟は賞レースにはとんと無関心なことで有名だ。とはいえ、激戦が予想されるこの賞の行方は以下の2つに絞られるだろう。

本命:『ブラック・クランズマン』
スパイク・リーと共同脚本家たちは、世間を驚かすような荒業をやってのけた。1970年代、黒人の警察官(ジョン・デイヴィッド・ワシントン)がKKKに潜入捜査するというロン・ストールワースの回想録を通して、当時から現代に続く種差別を鋭く批判した。

大穴:『ビール・ストリートの恋人たち』
『ムーンライト』でオスカーを手にしたバリー・ジェンキンスは、ジェームズ・ボールドウィン作の1974年のハーレム恋物語を上品に脚色したが、アカデミーからは高く評価されていないようだ。だが魂に訴える彼の脚本は、作品賞の候補に漏れた穴を埋めるには十分だ。

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE