ジョージ・クリントン最新語録 Pファンクの半世紀とツアー引退の真相を語る

―楽曲「One Nation」を作っていたときの思い出はどんなものですか?

ちょうどヤマハからたくさんの機材を手に入れたばかりだった。メンバー全員、箱を開けて新しい楽器や機材のテストをしていたね。そんなときに最初にできたのがこの曲で、新しい楽器を使ってジャムっている最中に生まれた。ジャムっていたのは、オハイオ・プレイヤーズから鞍替えしたばかりのジュニー・モリソン、バーニー(・ウォーレル/Key)、ダグ・ダフィー(Key)、ゲイリー・シャイダー(Gt)だったよ。とても流れのいい音楽だったから、俺の頭の中でどこかで誰かが言っていた言葉が浮かんだのさ。ワシントンDCの連中が俺たちを「グルーヴの元に集まった一つの国家(One nation under a groove)みたいだ、それが俺の国だ」と言ったことがあった。この次に「Ready or not〜」(歌詞を歌う)ができて、2つとも滑らかに流れるものだから、それから2日くらいで1曲として仕上げた。ミックスはほぼしていない。あらゆるEQや機材を使ってミックスしようと試みたけど、最終的にボードミックスを選んだし、それがラジオから流れてくるこの曲のミックスになったんだ。もう一度ミックスしようと試みたけど、最初のやつほど良いミックスにはならなかったね。

そして、これが俺たちにとってのアンセムになった。俺たちはあらゆる方向からファンクしていた。そんな俺たちがツアーに出るんだから、みんなは心の準備をした方がいいぜ。最高のファンクでみんなを盛り上げるからな。

―この曲は、人々を一つにすることについて歌っていますよね。

昔からそれがテーマだった。モータウンを通過して形成された大家族が68年、69年のロックンロールとヒッピー風のヴァイブを取り入れたんだ。俺にとってそれが一番だったのさ。大きな二組の家族が集う一つの大きなコミュニティ、というのがいつだって俺の夢だった。ウッドストックとファンみたいな感じだね。俺にとってのファンクはすべてを一つにするグルーヴなんだよ。



―今回のツアーはどんなものになりますか?

俺たちの歴史を振り返る必要があるし、新曲も披露しなきゃいけない。だって、俺たちの音楽に夢中なキッズたちは、(レッド・ホット・)チリ・ペッパーズやヒップホップのグループを経由してPファンクの歴史も学んでいるから。彼らは様々なバンドやスタイルを通じて俺たちを知っているわけだし、俺たちも自分たちが歩んできたあらゆる時代(の楽曲)を見せてやらないといけない。俺の場合、いつもステージに立って、観客の様子を見て、演奏する曲をその場で決めている。50年前の曲から現在の曲にひとっ飛びすることも容易いし、観客に馴染みのある曲を披露することにもなるだろうね。それに、俺たちは同じことを絶対に繰り返さないから、毎回新しいセットになるよ。

―そうなると、バンドはツアー前に何百もの楽曲をリハーサルしないといけないのでは?

俺がどの曲を選ぶかは誰にも分からない。観客の様子によっては、みんなでジャムって、その流れで思いついた曲をそのまま演奏するってこともある。でも、それができる会場とできない会場があるんだ。モータウンの曲だけ演奏することだってできるし、「どうしてその曲を演奏するの?」と言う観客は一人もいないはずだ。オレゴンやサンフランシスコでプレイするときは、ストレートなロックンロールのセットにして、「Flash Light」や「We Want the Funk」をロックンロールにアレンジして入れるかもしれない。そうじゃなきゃ、俺たちの楽曲のサンプルが入った曲をプレイするかもしれない。あるいは、(デ・ラ・ソウルの)「Me Myself and I」(※)を彼らの歌詞で歌うとか。彼らのおかげであのフレーズが有名になったからね。

※ファンカデリックの「(Not Just) Knee Deep」をサンプリングしている。



―どのようなステージにするつもりですか? マザーシップを復活させるとか?

マザーシップはもうスミソニアン博物館に展示されているよ。確か、あそこで一番大きい展示らしい。

―では、どんなステージングになりそう?

(パーラメントの2018年のアルバム)『Medicaid Fraud Dogg』がリリースされているから、医者と看護師みたいな感じだね。演劇みたいになる。真新しいステージさ。マザーシップに近いエネルギーが炸裂することになるよ。



―話を伺っていると、今でもパフォーマンスすることをエンジョイしているように思えます。ライブ活動を辞めるのは辛いのでは?

ああ、本当に辛いよ。でも俺にはやらなきゃいけないことがたくさんあるから。

―例えば?

これからも音楽は作り続けるけど、世の中への出し方をこれまでとは変えるだろうね。ソーシャルメディア経由とか、最近の新しいツールを使って発信するつもりだ。ラジオ局から一定の年代に曲を届けても、その曲は「古き良き音楽」になってしまう。新しい音楽をやりたいなら、新しいやり方で人々に届けなきゃいけない。そうじゃなきゃ、誰も音楽なんて聴いてくれないからさ。俺は新しいやり方で聴いてもらうよ。

―つまり、音楽から完全に引退するわけではないということですね?

それはない。俺のような年寄りでもできるイージーなやり方に変えるってだけだ。

Translated by Miki Nakayama

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE