ティーンエイジ・ファンクラブのソングライティング秘話、珠玉のメロディがひらめくまで

―お互いの作風については、どう思ってます?

ノーマン:レイはギターが上手いから、例えばアルペジオを弾きながら、それに絡むようなメロディとか自由に紡ぎだすことができるけど、俺はギターがそんなに上手くないからね。よくやるのは、ギターのチューニングを変える方法だ。例えば、6弦のEをDに落としてストロークすると、レギュラー・チューニングとは違う響きが生まれてインスピレーションを得やすくなる。ニール・ヤングも同じようなことをやっているみたいだよ。彼の場合は、1弦と6弦の両方をEからDに下げていて、それでこうやって弾くと(と、ギターを弾くジェスチャーをする)、“タラララ〜”(と、「Cinnamon Girl」のリフを口ずさむ)ってなるんだよ。



―なるほど、響きを変えることで自分のモードを変えてるわけですね。

レイモンド:俺が思うにノーマンの作る曲は、ちょっと構成が変わっているものが多い気がするな。コーラスパートが曲の最後に再び登場するとか、割と当たり前のようにやっているけど、実は風変わりだと思うよ。

―「The Concept」(1991年の2nd『Bandwagonesque』収録)とかはまさにそうですね。

ノーマン:それってレイ・デイヴィスもよくやる手法だよね。彼の作る曲はいたってシンプルだけど、構成が変わってるんだ。確かに、俺の曲もそういうところがあるかもしれない。ただ、別に意識して「よし、変わった構成にしてやれ」って思ってるわけじゃなくて、作っているうちにいつの間にかそうなっていることが多い。ビートルズもそうだよね。よく聴くと実は摩訶不思議な構成や、変拍子を使った曲が多いけど、おそらく「なんであんなこと思いついたんだ?」ってジョンに聴いても、「別に? 作ってたらああなっただけだよ」って答えると思う。

だから、例えば5+4+4拍子の曲や、気づいたらキーが変わってる曲が僕らにはあるけど、意識して作風が出来上がったというよりは、作り続けているうちに、自然と身についたものなんだよ。





Photos by Kazumichi Kokei

―アレンジについての考え方も変わりました?

ノーマン:うん。昔は曲ができた時に「ギターはこうして、ベースはこうなって」みたいなことも考えてたんだけど、最近はそれもなくなった。ブライアン・ウィルソンなんて、細かいフレーズまで全て自分でスコアに書き込んでコントロールしてると聞くけど、他のメンバーに任せるところは任せてしまって、それぞれがクリエイティブに取り組んでくれた方が、結果的にいい曲に仕上がると僕は思うな。最近は、そういうプロセス自体を自分でも楽しめるようになったね。そうそう、2週間前にハンブルグでレコーディングをしたんだけど、その時は僕の作った曲に、レイがメチャメチャいいベースラインを付けてくれてさ。

―「ダメ出し」される事もある?

レイモンド:もちろん(笑)。その瞬間は「なんだよ、せっかく考えたギターフレーズなのに」って思うけど、まあそういう時もあるって最近は思えるようになったな。とにかくノーマンの曲は、あまり頭で難しく考えずに思いついたフレーズを、片っ端から試すようにしている。

Translated by Kazumi Someya

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