ONE OK ROCKのTakaが語る新境地「プロダクションの緻密さと振り切った分かりやすさ」

ーキアーラがゲスト・ボーカルで参加している「In The Stars」も驚きました。なんだろう、ほとんどアリアナ・グランデの曲と言っても通用するようなポップ・ソングで。

そうですね、あの曲はもともと僕が歌っていたんですけど、彼女に歌ってもらおうって。そうしたら本当にすごくポップな、レディオ・ソングになったんです。

ーキアーラとのコラボは、リンキン・パークの縁で?

そうです。チェスター(・ベニントン)のトリビュート・コンサートがLAであって。僕も出させてもらったんです。あの時の僕はもう色々な感情を抱えてステージに立って歌っていたので、ほとんど何も覚えていないんです。悲しみを通り越えたところで生じる緊張感がすごくて、終わった後に本当に疲れて……それで映像を見返してみたら、「歌、ひどいな」って思いました。でも、それは僕だけじゃなくて、あの日出演していたアーティストはみんなそういう気持ちになっていたみたいなんですよね。キアーラとは、そんなコンサートで会いました。そう、会って裏で話した時に彼女も「全然ちゃんと歌えなかった」って言っていて……そこにはスティーヴ・アオキやZEDDもいたんですけど、みんなで終わった後に話していたんです。「俺ら、ここで会ったことをこの後ちゃんとかたちにしたいね」って。それからキアーラとも連絡取るようになって。

ー現在のアメリカ市場は、本当にロックの状況が厳しくて。

死んでますからね。

ーええ、そんな中で唯一頑張っているのがフュエルド・バイ・ラーメンのバンドたちですよね。パニック!アット・ザ・ディスコや、トゥエンティ・ワン・パイロッツのような。

そうですよね。

ー彼らはもともとエモやパンクとしてカテゴライズされていたバンドでしたが、皆揃って新作で新しいことをやっていて、過去のカテゴライズをぶち壊していっている。そこにはやっぱり旧来型のバンド・サウンドではもはや勝てないっていう危機感があったからで、そういうロック・バンドとしての危機感を、ONE OK ROCKも共有しているんじゃないかと。

そういう危機感は、日本でやることに関してはないですよね。いいバンドがたくさんいるので、そのままやっていけばいいんだと思う。僕らも自分たちのやりたいようにやって、ドーム・ツアーをやらせてもらったんで。あのドームっていうのは自分たちにとってある意味、好きなように走ってたどり着けた最高のゴールだったんです。だから次のゴールは好きなように走って見たい最高の景色じゃなくて、社会人のように責任を持って、自分たちのレベルを上げて、幅を広げていくために走っていきたいし、その延長線上に素晴らしい景色があることを願ってるんです。だから日本のバンドに関してはこのままでいいんじゃないかなって思います。米津玄師みたいな人が出てきて、ああいう素晴らしいメロディを生み出していて。RADWIMPSみたいなバンドもいたりとか。日本のシーンはそうやって好きなように引っ掻き回せばいいんだと思う。でも海外でやっていくとなると、どうしても難しいですよね。

ーいいロック・バンドがロック・バンド同士で競い合える日本と、それこそドレイクやリアーナみたいな存在と対峙することを求められるアメリカのロック・バンドではシビアさが違うという。

そうですね。たとえば、昨年から映画『ボヘミアン・ラプソディ』が大ヒットしていますよね。あの映画がヒットした理由が僕にはすごくわかるっていうか……結局、今のロック・ミュージックって、もちろん普遍なものではあるんですけど、同時にファッションなんですよね。ロック全体がメタルのようになっているというか、全く違うジャンルの人が見た時に、ロックとすぐにわかるものがロックなんだよっていうか。中途半端な場所でダラダラやっていると、それはもう理解されない時代になっている。僕の感覚で言うと、振り切っているのが今のロックなんです。『ボヘミアン・ラプソディ』っていう映画、クイーンっていうバンドの振り切った分かりやすさ、まさにあれが今ロックに求められているものだと思うんです。

ークイーンと言えば、「Push Back」は無茶苦茶クイーンを感じる曲でした、コーラスとか。

ちなみに『ボヘミアン・ラプソディ』が公開される前から、僕の中で今回のアルバムのテーマはクイーンだったんで(笑)。「Push Back」はまさにそれを意識した曲です。あのコーラスも、メンバーにも歌って欲しいって気持ちがあったんで。だから『ボヘミアン・ラプソディ』がこういうタイミングで出たことに自分でも縁を感じて、勇気をもらったんですよね。あの映画を観たらきっと皆さんもわかると思うんだけれど、クイーンのレコーディングのやり方は、ギターを何本も何本も使って演奏して録るというよりも、プロダクションの段階で様々な音を入れたり、ボーカルを重ねてみたり、オペラで歌ったりすることで、曲を膨らませていますよね。僕らも今作ではああいうようなことを自分たちのレコーディングでやりたかったんです。そういう話を僕らのA&Rにしたら、彼は「トゥエンティ・ワン・パイロッツなんてギターさえ入ってないじゃない。それでもロック・バンドだよ」っていう意見だったんです。この人僕たちより冷めてるなって思いました(笑)。

ー(笑)。

ギターすらいらないって言い出したぞって(笑)。そういう意見をもらって、いろんなせめぎ合いの中で作っていったのが『Eye of the Storm』なんです。



『Eye of the Storm』
ONE OK ROCK
A-Sketch
発売中



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