セイント・ヴィンセントとデュア・リパ、セクシーすぎるグラミー授賞式パフォーマンスを振り返る

グラミー賞でデュエットをした、セイント・ヴィンセントとデュア・リパ(Photo by Monty Brinton/CBS via Getty Images)


クラークが自身の曲とデュア・リパの曲の間に「リスペクト」を入れ込んだことに彼女の感傷が現れている。「みんなの耳に『リスペクト』を届けたいと思った」とクラーク。そんな彼女が一番好きなフランクリンの曲は「The House that Jack Built(原題)」と言う。「『リスペクト』は60年代の市民権と有色人種を歌った驚異的な曲だった。その点でこの曲は聖歌のようだし、女性解放という点でも聖歌のようなの。『あなたは私に敬意を見せないとダメ』と歌っているわけだもの。でも、その後に続くフレーズ『早くちょうだい(sock it to me)』がいい感じで、歌っていて気持ちいいの。これはジェームズ・ブラウンが使い倒した昔の流行り言葉の一つだと思うけど。このフレーズにかなり魅了されちゃったの。冗談っぽいフレーズだけど、複雑なメッセージがこもってもいるのよ。だから、デュアが『Sock it to me』と歌ったとき、この曲のヤバさとセクシーさが急上昇したのよ」

二人の似たような出で立ちに関しては、クラークは偶然もしくは「錬金術」と言う。現在の彼女たちは偶然似たようなヘアスタイルなのだ。「とにかく、『いいわね、最高よ』って感じで、二人でセクシュアリティの駆け引きをパフォーマンスしようってなった。でも、二人がなぜか双子のように似ているから、それが不気味で興味を掻き立てる奇妙な雰囲気を醸しているのよ」とクラークが説明してくれた。「最初に二人が話していたことの一つが『どんなふうに見せたい?』だった。二人とも似たような場面で着るヴェルサーチ的コスチュームを着たのよ。デュアはアート・ディレクションにとても長けていて、二人のコラボレーションはとても奥深いものとなったわ。これまでグラミーのステージで披露されたパフォーマンスの中で一番セクシーで、最も素晴らしいものを披露したかったの。あのパフォーマンスは私たち自身と私たちの目の間の理想の男性を表したものよ。あのシンプルさとあの緊張感のおかげで上手く行ったと思う」

クラークのパフォーマンスに賛同する性的マイノリティのツイートが爆発的に増えている状況を鑑みると、二人のパフォーマンスはLGBTQコミュニティの共感も得るものだったようだ。クラークはまだ彼らのツイートを読んでいないが、この反応を人伝に聞いた彼女は満足していると言う。「音楽の素晴らしい点は、人々が自分の人間らしさを正直に表して、『これが自分の本心で、自分の弱点と長所はこれ』と認められることなの」と言ってクラークが続けた。「これから人間の条件の現実について話していくつもり。このことを実際に話すことで怖さが軽減するし、怖さが減るってことは孤独を感じる人が減るってこと。そして、孤独を感じる人が減るってことは、互いに共感できることが増えるし、それによって暴力も減る。馬鹿げたことが減って、常に人を批判することが減る。それが一番重要なことなのよ」

パフォーマンスに先立ち、クラークは「マスセダクション」で最優秀ロック楽曲賞を獲得した。「ロック音楽として受賞したことは本当に素敵なことよ。だってロックが大好きだから。本当にギターがめちゃくちゃ好きなの。誰かに『君が作る音楽って何?』と聞かれたら、どう答えるかは自分でも分からないけど、『ロック音楽』という括りで受賞できたことは本当に嬉しかった」と、クラークが喜びを語った。ちなみにリパは、このパフォーマンスのあと、最優秀新人賞を授与された。

今回のグラミー受賞式を振り返ったとき、クラークには嬉しい瞬間がたくさんあったようだ。クインシー・ジョーンズに彼の貢献を感謝したこと、ジミー・ジャムがよろしく言っていたと友だちから聞いたことなど。しかし、彼女にとって今回のパフォーマンスは特別なものだと言う。「パフォーマンスを行う前にデュアと短い儀式をしてからステージに向かったけど、二人のパフォーマンスが乱れることは一度もなかった。手をつないでステージに上り、パフォーマンスを始めたの。それこそ『何があってもお互いの目を見たらすべてが分かるし、私にはあなたが、あなたには私がいる。私たち二人の世界よ。それを見せよう』って感じだったのよ」と、クラークが教えてくれた。



Translated by Miki Nakayama

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