セイント・ヴィンセントとデュア・リパ、セクシーすぎるグラミー授賞式パフォーマンスを振り返る

グラミー賞でデュエットをした、セイント・ヴィンセントとデュア・リパ(Photo by Monty Brinton/CBS via Getty Images)

セイント・ヴィンセントとデュア・リパは、グラミー賞授賞式でデュエットを披露。「誘惑とセックスとそれにまつわるすべてのことを歌っている」という二人それぞれの楽曲とともに、故アレサ・フランクリンの楽曲を織り交ぜたスペシャル版をステージにて披露し話題となった。

ここ数年間、面白味に欠けるグラミー賞授賞式が続いていたが、今年の授賞式では活気のあるパフォーマンスを披露したアーティストが何組か出てきた。その中でも見る者のあごを外すほどの驚きを与えたが、セイント・ヴィンセントがデュア・リパと披露したセクシーさ満載のデュエットだろう。このデュエットでは二人の人気アーティストがそれぞれのシングル「マスセダクション」と「ワン・キッス」をマッシュアップさせた。

まず、セイント・ヴィンセント(別名アニー・クラーク)が影の中から出現する。彼女は黒ずくめのコスチュームで、色気たっぷりのギターリフを弾きながら、「ストレスの多い地位の修道女」や「ロリータが嘆いている」と歌う。すると後ろから声が聞こえ、「マスセダクション」というコーラスを歌いながらリパが登場する。ここでのリパは、クラークの漆黒のボブヘアとモノクロームな外見の鏡像のようだ。そして二人は視線を交わし、互いにもたれ掛かりながら、アレサ・フランクリンの「リスペクト」の一部を挟んで、リパとカルヴィン・ハリスのコラボ曲「ワン・キッス」へと移る。リパが踊り、クラークがクールな演奏と歌を挟むこのパフォーマンスは、授賞式の夜を飾る最高のパフォーマンスとなり、多くの人々の話題となった。

「この2曲はコインの裏表よ」と、選曲理由を聞かれてクラークが答えた。「2曲とも誘惑とセックスとそれにまつわるすべてのことを歌っているの。それに私たちは他界してしまった偉大なソウル・クイーンに敬意を表したかったから、『セックスの支配と服従関係に置き換えて、自堕落な“リスペクト”を歌うのはどうかな?』となったわけ。今までこの曲がこんな雰囲気で披露されたことがあるのか、私は知らないけど」と。

クラークとリパのデュエットは、グラミー賞のケン・アーリックがこの二人のコラボレーションが不可欠という考えに至ったことで、土壇場で実現したコラボレーションだった。「私の返事は『もちろん、やる』だった」とクラークが説明した。「初めて『ワン・キッス』を聞いたとき、『ああ、これは本当に最高の曲』って思ったの。『ニュー・ルールズ』のときもそうだった。彼女と初めて会ったのが今からちょうど1週間前で、ものすごい勢いで仲良くなったわ」 コラボレーションが確定したのち、彼女たちは急いでパフォーマンスを完成させないといけなかった。そして、なんとか形が見え始めたのは先週の水曜日(2月6日)のことだった。

グラミー賞でのパフォーマンスを振り返ってみて、クラークはマールボロを吸うという歌詞を密かに紛れ込ませることに成功したことと、彼女が着用したセクシーなナイトウェアがCBSの放送基準をパスしたことに満足していると言う。「ラッキーだったのは、私たちが2番目の歌詞を歌わなかったことね。だって『被害妄想の隠匿が地下室のカーペットに落ちる』なんて歌詞だもの」とクラークが笑った。「この曲はクレージーなセックスソングよ。でも、それ以外の要素も含んでいる。あらゆる段階の誘惑の強力さを歌っているの。性的な誘惑、政治的な誘惑、全体主義、快楽の絶頂を味わいたいという欲求。私が掴もうと思った事柄の二面性には非倫理的な類似点があるように思えたの。つまり、誘惑は興奮を与えるものだけど、同時に力関係が反転することでもある。一方はパワーの放棄で、もう一方はパワーの獲得なんだけど、それじゃあ、その後の力自体はどうなるの?って思うわけ」

Translated by Miki Nakayama

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