DEAN FUJIOKAが探求する音楽の世界

ーノスタルジーな雰囲気の「Fukushima」も印象的でした。

どの曲も作るのは大変だったんですけど、「Fukushima」が一番順調にいった曲なんです。日本の民謡、童謡みたいな曲が作りたくて、“NEO童謡”というか「赤とんぼ」「ふるさと」のような、Aメロとかサビとかじゃなくて、本当に一番シンプルな形での起承転結をメロディでも歌詞でも作りたいなと思って。あとは“故郷の歌”というコンセプトもハッキリしてたので、当初描いていたヴィジョンに近いものになったと思います。一緒に制作したmabanuaさんのおかげです。

ー歌詞はどうでしたか?

難しかったです。というのもメロディの譜割りが少な過ぎて、言葉を1文字も無駄に使えなかったからこそ、自分の伝えたいことをどれだけミニマルな形で表現できるかが勝負でした。この曲を「Fukushima」というタイトルにしたのは、自分が生まれた場所だというのもあるんですけど、海外の人から見たときに福島=震災のイメージがまだ強いところが僕的には気になっていて。そこに自分なりの福島のイメージを足したかったんです。

ーライブを拝見したときのDEANさんはステージ上でオーディエンスと一体となって曲を楽しんでいたり、ヴォーカルを通して自分の中にあるものをさらけ出していたり、音楽に対してはとことんオープンな姿勢だなと感じました。俳優のお仕事とはまた全然違うものだと思うんですけど、DEANさんは音楽をどういう風に捉えているんでしょうか?

音楽を作るプロセスで、自分の中で別々のアカウントがあるんです。例えばTVドラマ、映画、CMなどのタイアップ案件。書き下ろしで曲を書く前に、そのコンテンツがどういう趣旨で作られたもので、どんなコアバリューを持っているのかを理解します。タイアップの案件じゃないにしても、「Fukushima」のように「この曲はどんなヴィジョンで作ったらいいのか」を考えること。そんなディレクター的なアカウントがまず一つ。ディレクションが定まると、次に作家のアカウントに移ります。ソングライターです。曲を書いたり、歌詞を書いたりという作業に入る。そして出来上がった曲を歌うシンガーのアカウント。あとはアレンジ、ミックス、マスタリング……これらの作業はパートナーと一緒にやるんですけど、一連の作業には自分も全て立ち会います。というような、最終的な方向性を示す役割を担うアカウントもある。いずれも自分の中ではシームレスにやっていることで。

俳優のお仕事の場合、監督やプロデューサーが作りたい作品の一部が俳優なので、自分の感情や身体を使って全力でお手伝いする、という感覚なんです。カメラの前で演技するということは、監督がいいと思うかどうかが全てなので。でも音楽はすごく自発的に提案して、それを実行していかなきゃならない。そうやって作ったものを今度は人前でパフォーマンスする。みんなでアンセムを一緒に歌おう!みたいな瞬間もあれば、自分の内面に光を照らすような時もある。ライブでお客さんとその場で同じ時間と同じ場所を共有して、一緒のサウンドで共鳴し合う。結局そこにモチベーションが強くあるから、音楽を作り続けてるんだと思います。

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