デンゼル・カリーが明かす、レイダー・クランからXXXテンタシオンへ連なるシーンの歩み

2019年1月に初来日公演を行ったデンゼル・カリー(Photo by Ryota Mori)



ー昨年リリースしたアルバム『Ta13oo』についても聞かせてください。全部で3部構成になっていますが、このアイディアはどこから?

最初は特に目標も定めずに作り始めていって、とりあえずテーマは「ダーク」にしようと思っていた。それで、実際に制作をスタートさせて行ったんだけど、自分の人生における幸せな瞬間とダークな瞬間のコントラストを描きたいと思い始めた。それで出来上がったのが「グレイ」なんだ。アルバムの中で「グレイ」の部分がもっともリアリティを反映した内容になってると思う。そして、誰もがハッピーだと感じるような曲を「ライト」にまとめた。同時に、「ライト」では自分は何者か、ということや、自分が満足に思っている状況なんかを描写した。もともと、「ダーク」「グレイ」「ライト」の順番で構築しようと思ったんだけど、じっくりと作品を作り上げていくうちに、順番を逆にしたいと思ったんだ。

ー「ライト」からスタートして「ダーク」で終わるコントラストが見事だと思いました。

基本的に、みんな「グレイ」を気に入るんだよね。もちろん、みんなリアリティ(現実)世界を生きてるんだからそれは納得できるだけど。でも、「ダーク」パートはそうじゃない。アルバムを作り終えた時、とても満足だったけど、でも、アルバムの”終わり方”も自分の他のアルバム作品とは違うタイプにしようと思ったんだ。それで、最後の最後に曲の順番を入れ替えて、とても暗くて恐ろしいトーン、つまり「ダーク」の世界観でアルバムを終えることに決めたんだ。そして、マネージャーやプロデューサーと「これはこの日に出そう」って話し合いながらアルバムの三つのパートを分割してリリースしたんだ。チームとしての努力の賜物って感じだったよ。とにかく、アルバムのアイディアに関してはプロットを熱心に練っていった。全体的に、制作にはいつもより長い時間を掛けた。曲を作り終わった後も、エディットやマスタリングにもじっくり向き合って作ったアルバムだよ。


Photo by Ryota Mori

ー本作では、自身の痛みや感情、成長などが描かれています。特に「Clout Cobain」は現代社会における強烈な風刺としての性質を持つ一方、若いリスナーにとっては共感できるアンセムにも感じます。あなたの楽曲を、まるでセラピーのように享受している若者も多いのではないかと思いますが、ファンのリアクションはどうでしたか?

確かに、その点に関してはたくさんのDMをもらうよ。大半が若い男性のリスナーだね。『Ta13oo』に関しては、ファンの反応も一曲ごとに異なるんだ。まず、前作のEP『13』とも全く異なる仕上がりだし、『13』のようなテイストが好きなリスナーは新しい方向性を受け止められなくて、『13』の世界観に留まってしまっているような感じ。逆に、『Ta13oo』を気に入ってくれるリスナーは「デンゼルが歌ってる!」「ラップの速度も速すぎなくて聴き取れる!」「前ほど叫んでないな!」とか、俺がアーティストとして成長していることを喜んでくれいて、バッチリハマってると思う。俺は、自分のメンタリティをアルバムに落とし込んでるんだ。もちろん、全員が俺のことを理解してくれるわけじゃないし、俺だってそれを強制するつもりもない。だから、気にいるかどうかはみんなの好きにすればいいよ。



ー『Ta13oo』の1曲目は、同タイトルの表題曲からスタートしますが、これは幼い頃に性的虐待を受けていた女性をテーマにした曲ですよね。この曲でアルバムがスタートするという点においては、特別な意図がありましたか?

女性を取り巻く環境においては、たくさんの出来事が起こってるだろ。例えば#MeTooの運動とか、まだ子供の年齢なのに、それをいいように利用されて性的虐待を受けてしまう事例とか……。

ー最近だと、ドキュメンタリー番組の「Survivng R.Kelly」も話題になりました…。

そうなんだけど、R・ケリーの騒ぎの前から、こうしたことは個人的にも身近な問題だったんだ。でも、俺はそうした経験も、自分の言葉で(人とは)違うやり方で表現することを知った(※デンゼルは、幼い頃に成人男性によって性的虐待を受けていたとラジオ番組で告白したことがある)。だから、今の俺があるんだ。でも、こうやってシリアスな話題を歌っているけど大半のリスナーには、ただこのアルバムを楽しんでほしいと思ってる。どのみち、俺は自分のメッセージを発し続けるということには変わらないんだから。その伝え方が、前よりも多様的になってるけどね。

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