デンゼル・カリーが明かす、レイダー・クランからXXXテンタシオンへ連なるシーンの歩み

ー今や、フロリダのシーンは“新たなヒップホップのメッカ”とも言えるほど活発な動きを見せています。それに対してはどう思っていますか?

そうした変化に関しては、いいことだと思う。だって、ヒップホップ史においてフロリダは、そんなに注目を浴びる場所じゃなかったからね。今や、SoundCloudシーンがメインストリームになってるけど、それも、スペースゴーストパープや俺たちがやってきたことと繋がってると思うんだ。俺たちがSoundCloud上でファンを集めたことが起爆剤になった。俺も、「Threatz」や「Ultimate」がヒットしたのはSoundCloudのおかげだったからさ。それがきっかけで、XXXテンタシオンやスキー・マスク・ザ・スランプ・ゴッド、スモークパープたちが活躍するようになっただろ。あとはリル・パンプにコダック・ブラック。だから、フロリダ、特にサウス・フロリダがシーンの中心地になって本当に嬉しく思ってるよ。2013年にレイダー・クランが解散するまで、本当に多くのキッズが「レイダー・クランは一体どうなってるんだ!?」って俺たちの地元までやって来てたからね。あの時の青写真が、今はこうした形になっているのは嬉しいね。



それにもともと、フロリダではトリック・ダディ(※)が確立した王道スタイルがあった。黒いバンダナを頭に巻いて、同じようにベルトにもバンダナを通して、口の中にはゴールド・ティースを敷き詰めていただろ? あと、クレイジーなヘアスタイルもそうだな。俺たちもそういった地元のOGのヴァイブスを受け継いでいるし、それが周りにも派生しているんだと思ってる。あと、アニメTシャツ! 今じゃみんな普通に着ているけど、ラップ・ゲームにアニメを持ち込んだのも俺たちが最初だと思う。当時はみんな「何それ?」って感じだったけど、ロブ・バンクスや(レイダー・クランの)ザビエル・ウルフや俺なんかが、アニメ・ネタを積極的に取り入れていったんだ。

※サグ(Thug)と呼ばれるギャングスタ・スタイルを代表する、マイアミ出身のベテランラッパー(1974年生まれ)。



ー先ほど名前をあげてくださったリル・パンプら、地元の次世代ラッパーたちへの責任感や、自分がシーンを率いていかねばならないというプレッシャーはありますか?

ノー。そういった責任感は全く感じていない。とにかく、自分が正しいと思ったことをやるまでだ。音楽においても、自分が自分をどう描いて表現していくか、ということに尽きると思う。俺は誰にも干渉しない主義だし、気にならないからね。

ーフロリダ出身のラッパーには、特に生き急ぐ感じや、厭世観を強く感じることが多いように思います。あなたの歌詞にも「it’s a Miami no Moonlight(これがマイアミ、『ムーンライト』は当たらない)」というラインがありますよね。ご自身の故郷をどのように捉えていますか?

マイアミってそういうところなんだよ。サウス・フロリダは特にね。18、19、20歳の頃に友達を亡くすことも珍しくない。25歳まで生きられたら本望、っていうことも多い。俺はポジティブな人たちにーー特に俺の両親ーーに育てられた。俺がこうして生きている理由は、自分の母親と父親のためっていう感覚もあるね。

そうそう、俺の地元は、ドキュメンタリー番組の舞台になりそうなところだよ。ビーチもあるし、景観はとっても美しい。シティに行けば独特のカルチャーを感じることができる。フロリダは島だから(※正確には半島)、リッチな白人も多いし、ツアーにくる人たちも多いんだ。住んでいる白人のうち、大半はユダヤ系。そして、キューバからの移民もたくさんいる。俺が生まれた南東部は、特にキューバやハイチからの移民が多い場所。その代わり、色んなコントラストやリアリティがある。


上述の歌詞は、『Ta13oo』収録曲「Switch It Up」のもの。

ー今はLAに拠点を移していますよね?生活はどのように変わりましたか?

毎日スタジオにいる。ていうか、わざわざ外に出なくてもすむように、自分の家の中にスタジオを作ったんだ。朝、彼女が仕事に行くと俺はスタジオ部屋に移動して作業を開始する。LAに引っ越して、生活はよりベターになったかな。さっきも言ったけど、俺は誰かに干渉するタイプじゃないから。誰とも話さず、自分のことに集中するだけ。

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