【インタビュー】米大統領選に挑む華人系起業家、アンドリュー・ヤンの素顔

ー議論を始めるよいきっかけになると思います。あなたは本当にこのアイデアを推進していくのか、それとも本当に大統領になろうという野望があるのでしょうか?

私が望むのは、現代の最も大きいと思う問題を解決することだ。きっかけはどうあれ、与党も野党も問題の存在を認めようとしないし、取り組もうともしていない。もしも誰か私以外の人が大統領選に勝利し、正に私が今提案している全てを実現してくれるなら、私は大歓迎だ。

我々はこの国を、大混乱のまま次の世代へ引き継ごうとしている。例えば気候変動問題について、ほとんどの国民はそう感じている。気候変動問題は本当に深刻で、実在する脅威だ。また、多くの米国民が就く職業や貢献度が過小評価され縮小されていくような経済も、子どもたちの世代へ残そうとしている。

真面目に一生懸命働いているトラックドライバーだろうが、怠け者のだらしないドライバーだろうが、関係ない。自動運転トラックがどちらのタイプのドライバーにも取って代わろうとしているのだ。価値に基づき報酬を得るような経済ではないという現実を、我々は直視し始めなければならない。その経済は、どんな役割を持ったどのような人だろうがお構いなしに、何十万という人々を見捨てようとしている。

ー少し前にあなたは、ジャーナリズムも廃れていく業界のひとつだと指摘しています。各選挙区のジャーナリストに資金援助するというあなたの提案には、興味をそそられました。

国民が今起きていることを把握していない限り、有効に機能する民主主義の実現は事実上不可能だ。以前は多くのコミュニティに、地域の広告と三行広告が支える地元紙があった。ラッキーな時代だった。しかしその後、三行広告が排除されCraigslist(クレイグズリスト)に置き換わり、今やジャーナリズムは廃れていこうとしている。そして多くの米国民がニュース砂漠に生きている。地元のジャーナリズムなしに、住民に地域の問題に対する賢い決断を下したり適切な判断に基づく投票をさせるのは、不可能だしばかげていると思う。私が提案しているのは、各選挙区のジャーナリストに資金援助しようというフェローシッププログラムだ。民主主義を信じるなら、ジャーナリズムも信じるべき。だからジャーナリズムを活かすために資金を投入すべきだ。

ーあなたは成功者のひとりです。しかし全国的には知られていません。読者はあなたの何を知っておくべきでしょうか?

私は移民の息子だ。父は物理学の博士号を取得し、GEとIBMで米国の69の特許取得に貢献した。母はアーティストで弟は心理学の教授だ。私は5カ月間ニューヨーク市でうだつの上がらない法律家を勤めた後で、ドットコム企業を立ち上げたもののすぐに失敗した。ニューヨークのヘルスケア・ソフトウェアの会社に4年間勤めた後、GMAT予備校のCEOに就任した。全米No.1の予備校に成長させ、2009年にワシントン・ポストに買収された。その頃私は、もっと多くの若者が全米各地で起業すべきだと思った。何もウォールストリートやシリコンバレーが全てではない。そこで私は非営利団体ヴェンチャー・フォー・アメリカを立ち上げ、デトロイト、クリーヴランド、セントルイスなどの都市で数千の雇用を創出する支援をした。そうしている内に私は、全米各地の各業界で数十万の職が吹き飛ばされようとしていることに気づいた。

ーあなたは、誰もが受けられる無料結婚カウンセリングなど、多くの興味深い政策案を打ち出しています。もうひとつ、力を入れたい政策案があれば教えてください。

私のキャンペーンの柱のひとつとして、経済発展と経済価値を別々に測る必要性を打ち立てている。現在我々はGDPを基準にしているが、GDPの算出者ですら福祉を測る基準としては酷いものだと述べているし、福祉を測る基準として使うべきでない。自動運転トラックはGDPに大きく貢献するだろうが、実に多くのコミュニティにとってとても悪い影響をもたらそうとしている。メンタルヘルス、薬物乱用、平均収入、平均寿命などについて、もっと実態に即した計測方法が必要だ。新たな測定方法が得られれば、発展するためのより的確な方法の理解につながるだろう。CEOとして測定方法を誤れば、間違った方向へと進み始めてしまう。今我々はGDP、株式市場の成長、公表失業率を基準としている。これらの数字は、今やほとんどの米国民の実態にほとんど即していない。公表失業率は特にミスリードを招いている。一旦離職した従業員はその後計算に入れられないからだ。米国の労働参加率は63%にまで落ち込み、エルサルバドルやドミニカ共和国と同じレベルになっている。また、働き盛りの男性のおよそ5分の1が、1年間職に就いていない状況だ。これらの人々が統計情報に組み込まれ、その統計情報が信じられないほど我々を誤った方向へと導いている。21世紀の我々の実態に合わせてアップデートされるべきだ。

ー既にキャンペーンに回った州での感触はいかがでしたか? 通じ合うのは簡単ではないと思います。人々にあなたのメッセージは伝わっていると思いますか?

アイオワ州で私は人々に「近所の店が閉まっているのを見たか?」と問いかけると、皆口々に「イエス、イエス、イエス」と応えてくれた。「なぜだろう?」と言うと、しばらく考えてから「Amazon」と言うんだ。そこで「その通り。これから良くなっていくか、それとも悪くなるだろうか?」と問えば、「もっともっと悪くなる」と言う。「そこで皆に聞きたい。この状況に対してあなた方はどうしようとしているか?」と質問すると、人々は「私にできることがあるのでしょうか?」という感じだった。私は「そう。私を大統領にしてくれれば、あなた方にもできることがある。私は、今クラウドかどこかへ吸い上げられているお金から、月1000ドルを取り戻してみせる。アイオワやニューハンプシャーの実体経済に数万の雇用を生み出し、あなた方の子ども世代が地元を離れなくても済むようにしよう」と言った。アイオワ州やニューハンプシャー州の多くの人々を惹き付けるにはこれで十分だった。

Translated by Smokva Tokyo

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