【インタビュー】米大統領選に挑む華人系起業家、アンドリュー・ヤンの素顔

米アイオワ州クリアレイクで開催されたアイオワ・デモクラティック・ウィング・ディングでスピーチするアンドリュー・ヤン(Photo by Daniel Acker/Bloomberg via Getty Images)



ーあなたの政策の目玉は“自由の分配”というユニバーサル・ベーシック・インカムです。失職したトラックドライバーたちの全容を把握し、全ての米国民に毎月支出できるのでしょうか?

トラックドライバーについて多くの時間を割いて話してきたが、そのほかにも大きな経済シフトにより、米国で最も一般的な職業である小売店の店員や販売員など数百万人の職が奪われようとしている。今後4年間で米国内のモールの30パーセントが閉鎖されるだろう。平均的な小売業界の労働者は39歳の高卒女性で、時給は11〜12ドル(約1200〜1300円)だ。さらに米国民の57パーセントが、今すぐ500ドル(約5万5000円)を支払えと言われても対応できない。今の歴史的な経済シフトに対応しようとするなら、人々にシフトを乗り切らせるような本当の解決法を授ける必要がある。最も効果的な方法は、ユニバーサル・ベーシック・インカムなのだ。私は、保守層にも受けの良いように“自由の分配”という呼び名を変えた。

ー本当ですか?

(笑)そうだ。数字はとても正直だ。どのように呼ぼうが、革新主義者、リベラル主義者、民主主義者は皆それを気に入る。保守派は“自由”という単語が付く限り、それを好きにならないが、外したら大いに気に入ってくれる。

ー月に1000ドル(約11万円)という案ですが、条件は付けないのでしょうか?

成人が対象だ。18歳になったら毎月1000ドルを受け取れる。

ーそれはジェフ・ベゾスだろうが誰だろうが、ということでしょうか?

その通り、誰でもだ。

ージェフ・ベゾスに月1000ドルを支給する理由を教えてください。

金持ちから取って貧乏人へ渡すという形でなく、真の意味で市民の権利とするため、万人向けの制度にする必要がある。しかし必要な財源を確保するために、AI、ビッグデータ、自動運転車で得た利益を活用する。我々は現在、これらニューテクノロジーの大きな恩恵は、Amazon、Google、Facebookといった巨大企業が受けており、しかも彼らの収める税金は少ない(彼らは経理処理のトリックや海外のタックスシェルターを使っている)、という術中にはまっている。我々は世界の先進国に倣って付加価値税を導入すれば、Googleの検索やAmazonの取引から得られる利益を国民に分配できるだろう。あなたが例として挙げたジェフ・ベゾスは結局今よりもっと(税金を)支払うこととなり、システムにももっと投資する。だから彼が月に1000ドル受け取っても、誰も問題にしないだろう。

ーほとんどの米国民は、付加価値税に馴染みがありません。どう課税するのか簡単に説明していただけますか?

モノやサービスに対する消費税で、プロダクション・チェーン内で支払いが行われる全てのポイントで課税される。他の国々が積極的に導入する理由は、取引を実行したり一定の集団へ販売しようとする際の不正操作や脱税がほとんど不可能だからだ。

ー例えばFacebookは広告料を得ていますが、いわゆる“消費”とは異なるように思います。この場合はどのように課税するのでしょうか?

彼らの広告主は、自分が受ける広告サービスに対して税金を支払うことになる。国民が常に利益の分配を受けられるようにするのが目的だ。

ーデジタルの世界でも付加価値税が有効だということですね。自動車や電子機器のように実体のあるものだけが対象ではないと?

基本的にお金のやり取りがある時には価値も移動する。そこで国民は利益の分配を受けられる。

ー結局どうなるのでしょう?

付加価値税は、欧州の半分の税率レベルにしても、新たに約8000億ドル(約8兆7700億円)の税収があるだろう。既存の支出、国民全員へ月1000ドル配当することによる経済成長、コスト削減と利得等を全て加味すると、成人全員に月1000ドル支払っても十分に採算が合う。

ー不確定要素が多いようですが、10パーセントの税を導入すれば全員に毎月1000ドル支払えるという理論でしょうか?

それが基本的な考えだ。しかし重要なのは、二次的効果に目を向けること。5万人の成人が住むミズーリ州のある街で、全員が月に1000ドル受け取ると住民は5000万ドル分の購買力を得ることとなり、自動車修理、子ども向けの食料や家庭教師、時折の夜の外出、家の修繕など、地元経済へ還元される。最終的に分配したお金は、街の中で循環することになる。つまり、付加価値税の収入がそのまま国民へ分配するお金となる訳ではない。そのお金は消えることはない。全ての実体経済が強固になり人手も不足するため、消費経済が成長し、新たな雇用が多く生まれるだろう。

ーしかし月1000ドル、年間で1万2000ドルというのは、年間4万6000ドルを稼いでいたトラックドライバーに対する補填として十分でないように思えます。

職業の転換のことを言っているのではない。期待しているのは、現在トラックドライバーとして働いている人はまだ何年かトラックの運転を続けられるだろうし、その上で受け取った年間1万2000ドルは財産形成のベースとなるだろう。トラック業界も全体として何らかの移行計画が必要だと思う。なぜなら年間1680億ドル(約18兆4160億円)のコスト削減は、大部分のトラックドライバーへの補償に十分で、さらに数百億ドルが残るからだ。

しかし経済全体を見ると“自由の分配”は実際に多くの雇用を生み出すだろう。さらに仕事の定義の幅を広げ、我々の社会が必要とする多くのものを取り込むようになるだろう。例えば、実に多くのコミュニティで消滅しようとしている介護や子育て、アートやクリエイティビティ、ボランティア、ジャーナリズムなどだ。これらは今、我々が大切なものだと言いながらも、金融市場では非常に低く扱われている。

“自由の分配”は、多くの人々が望む自由な仕事の形を実現する。特に今、社会において価値を認められず報酬もない多くの仕事をこなしている女性を助けることとなる。私の妻は自宅で2人の幼い息子たちの面倒を見ている。子どもの内ひとりは自閉症だ。彼女の仕事はこれからもなくてはならないものであるにもかかわらず、金融市場もGDPも彼女の働きの価値をゼロとみなすだろう。

Translated by Smokva Tokyo

タグ:

RECOMMENDEDおすすめの記事


Current ISSUE

RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事