音楽評論家・田中宗一郎と宇野維正が解説する、なぜK-POPは世界を制することができたのか?

BLACKPINKのジェニー・キム(写真中央:Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images)

音楽評論家・田中宗一郎と映画・音楽ジャーナリストの宇野維正が旬な音楽の話題を縦横無尽に語りまくる、音楽カルチャー誌「Rolling Stone Japan」の人気連載「POP RULES THE WORLD」。2018年12月発売号の対談では、BTSが全米アルバム・チャートで2作連続1位を獲得するなど、K-POPが世界的なセンセーションを巻き起こした理由について、田中と宇野が解説している。

田中:乱暴に言うと、今世界的に評価されているK-POPは、USメインストリームのプロダクションやビートにJ-POP特有の構成――ヴァース、ブリッジ、コーラス、ミドルエイトっていう構成を合体させただけだから。コーラス前のブリッジをハーフ・リズムにするのなんて、まんまJ-POPだし。でも、そこにEDM的なビルトを配したり。コーラスやフックは歌じゃなくて、やっぱりEDMみたくシンセのリフ主体のドロップにするとか。この前出たBLACKPINKのジェニー・キムの初ソロ曲とかホント良く出来てた。そういう足し算でいいと思うんだよね。北米に追いつくんじゃなくて、そこに何かをオンするっていう発想で。



宇野:そういう意味では、K-POPはJ-POPのいいとこ取りをしているわけだからね。それによって、J-POP唯一のアドバンテージだった展開の多さっていうのも、もはや日本のオリジナルではなくなってしまったんだけど。

田中:そう、J-POP的な価値観を世界に広めたのはK-POPだったっていう。例のJ-POP的な構成は70年代の歌謡曲には存在しなくて、90年代にJ-POPのコーラス至上主義が確立される過程で際立つことになったんだけど、よりコーラスを盛り上げるためのブリッジやミドルエイト(大サビ)の存在をさらに機能的にしたのがK-POP。それを彼らはグローバルにしたんだよ。

宇野:サウンド自体をグローバルにアジャストしない限り、絶対に世界には届かない。そこを疎かにしなかったのがK-POPの勝因だよね。日本に欠けているのはそこで。

田中:そう。ビートと音色、つまり、プロダクションにおける現代性だよね。ソングライティングの問題というよりは。

この後、本誌での2人の会話は、グローバルにおける日本を含むアジアのプレゼンスの話題へと転がっていく。

Edit by The Sign Magazine



田中宗一郎と宇野維正の2018年の年間ベスト・アルバム/ベスト・ソングのSpotifyプレイリストはこちら。







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