米人種差別問題、高校生とメディアを利用したトランプの策略

この番組に登場する2〜3日前、共和党の息のかかったPR会社の手伝いを得て、サンドマンは保守派が主張する内容に従った声明を作っている。その声明には、彼と彼の同級生は「ソーシャルメディアの暴徒」の被害者だと書いてあった。サヴァンナ・ガスリーとの会話の中で、サンドマンはその声明に書かれた文章を繰り返し言うだけだったが、ガスリーはその言葉を額面通りに受け止めた。その姿はまるで息子を心配する母親が疑わしい点を好意的に解釈して、息子を甘やかしているようにも見えたのである。

それは「今回の一件で誰かに謝るべきだと思う?」と「自分が悪かったと思う?」というガスリーの質問に顕著だった。

このインタビューでサンドマンが謝罪した場面は一つもなかった。結局、大統領はすでにこの青年の言動を承認していたのである。それにもかかわらず、ガスリーはサンドマンがこの経験から教訓を得たことを視聴者に強く印象づけようとした。「サンドマンは恐怖を感じながら生きたくないと言います。そして、この一件を通して、他者に対する深い理解を得られるようにしたいと望んでいます」とガスリーは述べたのである。

トゥデイのツイート
「フィリップスさんを全力で尊敬しています。彼も表現や宗教の自由を保証されたこの国の権利を自由に行使していた人です。それに、彼がこの国の兵役についてくれたことに感謝したいです。あと、彼とお話してみたいと思います」(ニック・サンドマン談)

トゥデイで公開されたこのインタビューは、右翼がメディアと戦うためにコビントン・カトリック高校の生徒を小道具として使用した不誠実な行為とみなされた。事実、サンドマンの主張と矛盾する動画が存在する。フィリップスへの「あの表情は無意識だった」と、あれは「自分は怒らないよと彼に伝えるための」笑顔だったと、彼は人々を説得している。しかし、サンドマンの笑顔が穏やかな笑顔に見えない、優勢を示す笑顔だ、人を見下す笑顔だとコメントする人が後を絶たない。

サンドマンは社会の今を映す鏡だ。計り知れないハラスメントを受け、ホワイトハウスから一切支持されなかったデヴィッド・ホッグがそうだった。トレイボン・マーティン(2012年2月26日射殺、享年17歳)やタミール・ライス(2014年11月23日射殺、享年12歳)など、疑わしい点を好意的に解釈してもらえなかった多くの有色人種の若者たちがそうだった。そして、今でも南部の国境で親から引き離されたままの何千もの移民の子どもたちもそうだ。1月22日、翌日の「トゥデイ」にサンドマンが出演すると公表されたあと、ニューヨーク・タイムズ紙のオピニオン・コラムニスト、ジャミール・ボウイが自身のTwitterのフォロワーに向けて著述家タナハシ・コーツの言葉を発信した。

「人種差別は単純な憎悪ではない。特定の人間に対する深い思いやりと、それ以外の人間に対するもっと深い懐疑心という形で現れることが多いものだ」である。

Translated by Miki Nakayama

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE