大炎上フェスの裏側 『FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー』監督インタビュー

『FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー』のワンシーン(Photo by Netflix)

大惨事に陥った音楽フェス「FYRE(ファイア)」の裏側に迫った、Netflixのドキュメンタリー映画『FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー』が話題を集めている。同作の監督を務めたクリス・スミスが、制作の舞台裏について語った。

2017年、映画『マン・オン・ザ・ムーン』でジム・キャリーがアンディ・カウフマンに扮する姿を追ったドキュメンタリー『ジム&アンディ』の撮影を終えたクリス・スミス監督は、「大量の思いつき」リストにひとこと書き加えた――FYREフェスティバル。2017年、バハマで2週間にわたって初開催される予定だった、豪華な音楽フェスティバル。参加者に対する主催者側の触れ込みでは、豪華なヴィラでスーパーモデルとお近づきになれるうえ、ブリンク182やメジャー・レイザー、G.O.O.D. Music、ディスクロージャーなど有名アーティストらが出演することになっていた。


FYREフェスのプロモーション映像

唯一の問題は、これがすべて詐欺だったということ。マーケティングばかり重視して、実際の計画をそっちのけにした結果だった。参加者の中には「一生に一度の」経験をしようと何十万ドルも支払った人もいたが、いざ会場に到着してみると、「ヴィラ」とは名ばかりの災害避難用テントが並び、スーパーモデルは別の場所に隠れているのか、姿は見えなかった。アーティストはそもそもブッキングされていないか、または出演を辞退していた。困惑が怒りへと変わり、水や食料といった基本物資さえも絶たれると、ソーシャルメディアは『蠅の王』や『ハンガーゲーム』に喩えるコメントでもちきりとなった。「金持ちのミレニアル連中が騙されて、島に置き去りにされたんだってさ」というコメントが即座に現実のものとなり、その場に行けなかった人々は、辛辣に他人の不幸を喜んだ(フェスティバルの首謀者ビリー・マクファーランドは、参加者および投資家に対する詐欺罪で結局6年の禁固刑を言い渡された)。

スミス監督は世間と同じように、事件のニュースを追った。だが同時に、フェスティバルの関係者の話がほとんど表に出ていないことにも気がついた。そこで共通の友人が、彼にガブリエル・ブルーストーンを紹介してくれた。米Viceのジャーナリストであるブルーストーンはフェスティバルを熱心に取材していて、スミスにFYREの主要人物のヒエラルキーをいちから説明してくれた。「僕らはガブリエルのインタビューを録画して、インターネットから動画と情報を集めまくったんだ」と、スミスはローリングストーン誌に語った。「そしたらいつのまにか、45分版の映画ができたというわけさ――『いったい誰が、何をしたのか?』っていう、ざっくりした内容だけどね。実際何も起きてないんだから、わかりようがないけど(笑)」

結果として生まれた『FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー』は、驚愕の内部映像や(「平凡な負け犬連中に、はかない夢を売りつけようぜ」とは、初期のころ視察でバハマを訪れたマクファーランドの発言)大勢のキーメンバーとのインタビューを駆使し、「絵に描いた餅」を売るやり口を暴露している。この作品は、一種のタイムカプセルでもある。ブラックジョーク、あるいはホラー映画といってもいい。マクファーランドの極限のエゴと傲慢な態度、そして知ってか知らずか、1999年のウッドストック以来もっとも壊滅的な音楽フェスティバルの共犯者となった人々を赤裸々に描いている。スミス監督が、これら内部映像の入手方法や、マクファーランドがインタビューに応じなかった理由、さらに監督本人も「耳を疑った」というワンシーンについて語ってくれた。

Translated by Akiko Kato

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