―FYREフェスは内部崩壊が始まるや、世界的ニュースとなりました。世の中の人々は、事件の全容を分かったつもりになっているんじゃないですか?
面白い質問だね。というのも、映画に取りかかる際に気がかりだったのは、果たして映画になるんだろうか、ってことだったから。事件のニュースを読み進めると、どれもほぼ同じ内容の焼き直しで、事実もごくわずか――具体的な情報はほぼゼロに近かった。でもだからといって、その裏にものすごい事実が隠されているとも思わなかった。むしろ逆で、おそらくその程度のことなんだろうと思っていた。でもそこで、(フェスに関わった人々の中で)公の場で発言していない人が大勢いるってことに気づいたんだ。
―FYREのスタッフは、カメラに向かって話すのを嫌がりませんでしたか? それとも、すぐに打ち明けてくれましたか?
ほとんどの人はFYREの話に触れたがらなかった。アプローチしたばかりのころは特にね。聞いてびっくりするだろうけど、多くのスタッフにとっても、あれはかなりトラウマ的な経験だったんだよ。
―スタッフの一人は映画の中で、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を患っていると話していますね。
ああ。冗談で言ったんじゃないと思うよ。関係者には、心に傷を負う辛い経験だったと思う。
―そのスタッフは、フェス用のミネラルウォーターを通関させるために税関長とセックスしてくれ、とビリーから頼まれたと言っています。
こんなインタビューは初めてだよ。自分の耳を疑った瞬間だ。
―いままでのキャリアで、これに近いものは?
これに敵うものはないね。ゼロだ。