グラミー賞の栄冠を狙う、トップアーティストたちのマーケティング戦略

ロラパルーザのステージでライブをするキューバ系アメリカ人のシンガーソングライター、カミラ・カベロ(Photo by Michael Hickey/Getty Images)

賞レースが以前にも増して熾烈を極め、賞の重要度も高まる昨今、アーティストたちはあらゆる手段でグラミー賞の栄冠を狙う。トップアーティストたちの選挙運動とは?

ロサンゼルス在住の方ならおそらく、カミラ・カベロがグラミー賞2部門にノミネートされていることはご存知だろう。たとえノミネーションが発表された時、彼女の名前にピンとこなかったとしても。そのニュースは、ロサンゼルスの摩天楼の上にある日突然でかでかと現れた。カベロは高速道路の脇に40フィートの広告看板を出したのだ。看板には彼女の写真と「あなたの一票を!」の文字。音楽業界の重役たちの言葉を借りれば、これまで見た中で最も大胆な受賞キャンペーンのひとつに数えられる。

L.A.のような都市部での広告看板にかかる費用はひと月あたり1万5000ドル(約160万円)だが、グラミー賞の選考委員にアピールしようと極端な手段に出るアーティストは彼女1人ではない。レーベル関係者によると、今年の授賞式が直前に迫り、ノミネーションや票固めための活動は以前よりも熾烈を極めている。アーティストたちは宣伝目的でライブを行ったり、業界の大物たちにゴマをすったり、戦略的にあえてこのタイミングで曲をリリースしたり(サム・スミスとブランディ・カーライルはノミネーション選考の最終週、前触れもなくそろってシングルをリリースした)、あるいは第三者を雇って、投票権をもつと思われる人々のメールアドレスを突き止める。真正面からアタックする者もいれば、裏で手を回すのを好む者は、グラミー・ミュージアムでチャリティ・イベントを開催したり、著名人の集まる業界ライブに出演したりする。

「すべて政治です」1次選考に関わったあるマネージャーはこう言う(彼のもとに届いた贈り物の中には、テイラー・スウィフトの「VIPボックス」なるものもあった。スウィフト陣営はノミネート期間中、何千人もの業界関係者にこれを送りつけたものとみられる)。「誰が投票権を持っていて、誰が持っていないのか? この点に関して、ザ・レコーディング・アカデミーは情報公開していないので、裏工作が行われているというわけです」

積極的なプロモーション活動は音楽業界では常套手段だが、グラミーに特化したマーケティングの規模は、ここへきて一段とアップした。「宣伝費も年々増えています」と言うのはGlassnote Recordsのダニエル・グラス社長。過去にChildish Gambino、ザ・テンパー・トラップ、マムフォード&サンズなどがグラミー賞にノミネートされている。「業界紙への出稿予算、『あなたの一票を!』という破廉恥なメール――数年前は裏でこっそり行われていたのが、今では袖をまくり上げて、遠慮なくどんどんアタックしてくる。僕のところへ来て、『投票人でいらっしゃいますよね?ぜひ1票おねがいします!』って言ってくるんですよ。非常にあからさまでしょう」

Translated by Akiko Kato

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