苦難を乗り越えた俳優・安藤政信、40代のこだわりを語る

Rolling Stone Japan vol.05掲載/Coffee & Cigarettes 10 | 安藤政信(Photo = Kentaro Kambe)

音楽、文芸、映画。長年にわたって芸術の分野で表現し続ける者たち。本業も趣味も自分流のスタイルで楽しむ、そんな彼らの「大人のこだわり」にフォーカスしたRolling Stone Japanの連載。役者業とは「無機質なものに感情を与えていくこと」だと俳優・安藤政信は語る。己の演技を突き詰めるがあまり、若い頃は無軌道に見られることもあったそうだが、40代に入った今は現実を意識した上で、余裕をもって芝居を楽しめるようになった様子。そんな大人のこだわりを探ってみた。

Coffee & Cigarettes 10 | 安藤政信

「俺、芝居が好きじゃないんで」

インタビュー開始早々、苦笑しながらそう切り出された。

「役者しか稼ぐ道がないからやっているというか……。昨日もすごい、クソみたいな芝居をしちゃったんですけど(笑)、そういうときはコンビニで酒を買ってきて、飲みながらタバコを吸う。しょっちゅう吸っているわけじゃないから、たまに吸うとクラッとくる。その感覚が好きなんですよね。タバコへのこだわりですか? 一切ないです。20代の頃はメンソールを吸っていたんですけど、今は基本どこのタバコでもいい。大抵、人からもらってますしね(笑)」

安藤政信。19歳でスカウトされ、1996年に北野武の映画『キッズ・リターン』でデビューすると、その繊細な演技が各方面で絶賛されて一躍「時の人」に。現在は『スマグラー -おまえの未来を運べ-』や『コード・ブルー』『ブラック・スキャンダル』など話題作に数多く出演しているが、一時期はドラマにも映画にも全く出演せず「引退説」まで流れたことがあった。

「仕事、全然選んでないです最近は。来た順番にこなしている感じですね。確かに20代の頃は、好きな監督からオファーが来たらやるというスタンスだったんですけど、取り敢えず話してみて『この人のために、ちょっとやってみようかな』と思ったらやる。今度の映画もそうですね」


Photo = Kentaro Kambe

藤井道人がメガホンを取った『デイアンドナイト』は、安藤の俳優仲間でもある山田孝之がプロデューサーに徹し、ロケハンからオーディション審査、スポンサーとの交渉などにも参加した完全オリジナル作品である。「人間の善と悪」がテーマのこの映画で安藤は、子どもを守るためなら犯罪に手を染めるのも厭わない児童養護施設の職員、北村健一を演じている。大企業から父を死に追いやられた主人公、明石幸次(阿部進之介)の行動に、大きな影響を与える重要な役どころだ。

Styling = Taichi Kawatani Hair and Make-up = Hiroyuki Hosono ロケ地協力:Studio EcoDeco

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