Spotify有料会員一人あたりの平均売上が下がっている理由

そのうちの一つは、Spotifyに支払われる平均価格を合計すると、世界レベルで見たときに希釈されてしまうという事実だ。同社はある地域において、現地のGDPに応じて料金を低く設定している。例えば昨年の第1四半期、Spotifyは4つの地域で業務拡大を行った。そのひとつがベトナムで、現地での有料会員の月額料金は5万9000ベトナムドン。USドルに換算すると、およそ2ドル50セントだ。

Spotifyの全世界の平均有料会員料金は、割引キャンペーン(初回3カ月間は月額99セント、といったキャンペーンをしばしば実施し、新規ユーザー獲得を図っている)や携帯料金とのパッケージプランによって、さらに希釈される。その他に――おそらく、レーベル側を最もいら立たせている原因だが――Spotifyが提供する家族割や学生割サービスがある。

アメリカで展開しているファミリープランは、月額14ドル99セントで血縁者6人まで個別アカウントで有料会登録ができるというもの――1人あたりたたの2ドル50セントだ。こうしたお得なパッケージプランは、全世界のSpotifyの有料会員数を継続的に増やすのが狙いだ。ウォールストリートのアナリストたちの関心を集める上では非常に重要であり、結果的に株価にも大きく影響してくる。

昨年4月にニューヨーク株式市場に上場する直前、SpotifyのARPUが公表された。証券取引委員会に提出されたF-1財務諸表によると、Spotifyの月額ARPUは2015年末の時点で6ユーロ84セントにダウン。1年後にはさらに6ユーロ20セント、2017年には5ユーロ32セントにまで落ち込んだ。最新の財務報告書によれば、公式に発表された9月30日時点での2018年度第3四半期の月額ARPUはわずか4ユーロ73セント、USドルに換算すると5ドル50セントにまで下落した。

これはすなわち、全世界のSpotify有料会員の平均支払額が4年前と比べて、年間20ドル以上も減少しているということになる。そしてレコード会社は、こうした状況がさらに悪化するのではと懸念している。

巷では、Spotifyがこの半年の間にインドに業務拡大するだろう、と噂されている。インドでの一般的な音楽ストリーミングのフルサービス会員料金(GaanaやApple Music、Jiro Saavnなど各社)は月額99~120ルピー程度――わずか2ドルにも満たない。またSpotifyは最近MENA(中東および北アフリカ)にも進出したばかりだが、そこでの月額有料会員料金をUSドルに換算すると、上はアラブ首長国連邦の月額5ドル、下はエジプトの3ドルとなっている。

Translated by Akiko Kato

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