ー2018年はBTSが全米チャートの1位を獲得したり、いろいろなことが変わってきていると思うんですよ。そういう点で、日本にいる自分にはどうも、アメリカのリスナーは「国外の今」の音楽を聴くことに対してもっとも保守的なようにみえる。モリモト:いや、ぼくもその通りだと思うよ! みんな全然知らないよね。
ー気にもしてないというか。でもここのところ、ちょっと変わった流れもみえてきていて。急にアフロビーツが流行り出したりとか、そういうのには結構びっくりして。そういった兆候って感じてます?モリモト:特に88risingについて?
ーそうですね、アジアのコンテンツに関していうと。モリモト:もちろん、実感してきてるよ。なんか突拍子がなくて、かつネガティヴに聞こえるかもしれないけど、アジアの音楽市場はアメリカの手が入ってない、まだまだ未開発の状態にあると思うんだ。だから、そこがガッツリと組んだら、これからすごいことになると思うんだけど。どれほどお金を産むビジネスになるか考え出したら、気が遠くなっちゃうくらいだよ。とにかく、みんなにメリットがあるような関係性ができるのはいいことだよね。
ーそのうえで、あなたの音楽がアジアを代表する、といった見方をされることについてはどうですか? 2018年は日本人の活躍も多かったですよね。スーパーオーガニズムのオロノやミツキだとか。同じ日本人として活躍している姿をみるのは嬉しいのだけれど、彼ら自身がアジア人、ひいては日本人として括られることに対して、実際のところよく思っているのだろうか、と。モリモト:ぼくは誇りに思っているよ。出身はどこであれ、自分たちみたいないわゆる二世が、これほどまでに世間的な認知を得たり、広く発信することができるようになったのはおそらく初めてのことで、そういう意味で自分たちは、そうした環境における第一世代なんだと思う。それってすごく興味深いことだと思ってて。そういった特殊な文化、世代の声を届けるまたとないチャンスだよね。自分の経験からすると、ぼくみたいな今の世代の二世って、自分のルーツにすごくワクワクしてるんじゃないかと思う。ただ母国と深い関わりがないだけで、ぼくら自身はそれを欲してる。だからミツキとかぼくだとか、日本にルーツがある人たちは、この国になにか借りがあるみたいな気がしていて、もう一度ちゃんと繋がりたいって思ってるよ。もちろん、言語やカルチャーの違いはあるから、すべてのギャップを埋めることは難しいけど。でも一般的に、今のアメリカに移住してきた一世のひとたちも、アメリカの外の母国と再び繋がりを持ちたいって感じてると思うな。
ーそして、88risingを率いるショーン・ミヤシロも同じようなバックグラウンドを持っているんですよね。モリモト:そうだよ。ショーンも日本人だけど、アメリカで育ったんだ。
ーしかも、今はアメリカだけでなく、アフリカや東南アジアでも同じようなことが起きてますよね。モリモト:ぼくらの世代の二世がカルチャーの流れを大きく変えてるってことだよね? その通りだと思う。それにすごくいいことだと思う。そういう人たちがどうやって生きているのか、現状を理解することも大事だし、それを記録することもね。
ー日本人アーティストとのコラボレーションには興味はありますか?モリモト:もちろん! やりたいけど、誰とやったらいいかわかんないだけで……。でも、できたらいいなと思うよ!
ーこれまでに日本の音楽って聴いたことがある?モリモト:ほんの少し。お父さんはアメリカに住んでるんだけど、すごい量のCDをコレクションしてて。ほとんどが60〜70年代のものなんだけど、古い演歌とかも好きでさ。自分では、わりと最近になって興味が出はじめてから、80年代のものとかを少しかじって。佐藤博が好きだな。アメリカではそのあたりの古いファンクみたいなレコードがいますごく人気があって、そもそも手に入りやすいんだと思う。アメリカでは日本の古いものが新しく感じられて、その逆もまた然りみたいな、ふたつの国で時代を行ったり来たりしてるみたいな関係性ってすごく面白いよね。
Rich Brian/Higher Brothers/AUGUST 08/KOHH88RISING出演:リッチ・ブライアン、ハイヤー・ブラザーズ、オーガスト08、KOHH
※出演を予定していたジョージ、NIKIはキャンセル。セン・モリモトは不参加。〈東京公演〉
日程:2019年1月10日(木)
会場:ZEPP TOKYO
〈大阪公演〉
日程:2019年1月11日(金)
会場:ZEPP BAY SIDE
詳細:
https://www.creativeman.co.jp/event/88rising/「NEXT GENERATION BANK 次世代銀行は世界をこう変える」責任編集:若林恵
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